「遠隔臨場」をご存じでしょうか。
今回は国が推奨している遠隔臨場について紹介します。
建設業の課題を解決してくれるものなので、ぜひ積極的に導入していきましょう。
遠隔臨場とは
遠隔臨場とは、現場にいかずに遠隔で材料確認・段階確認・立会を行うことを言います。
国土交通省の定義では、動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)によって取得した映像・音声を利用し、遠隔地からweb会議システム等を使って「段階確認」「材料確認」「立会」を行うことです。
令和4年4月1日以降、遠隔臨場の対象工種がある工事は、原則全ての工事に適用となります。
国が勧めている、その背景
従来直轄土木工事では、現場監督が「材料確認」「段階確認」「立会」を直接現場に行って指示だしを行っていました。
令和2年度から、生産性向上や非接触・リモート化に向けて、web通信を利用した遠隔臨場の試行を行ってきたそうです。
その結果、令和2、3年で普及が進み、現場への移動時間や立ち会う受注者の待ち時間が短縮されました。
このように、作業効率アップや人手不足解消を目的に試行を行ったことで効果が得られたため、令和4年から本実施に移行することにしたようです。
遠隔臨場の実施背景には、アナログな建設業界のICT化やコロナウイルス感染症の拡大防止もあったようです。
遠隔臨場のメリット・デメリット
では、遠隔臨場のメリット・デメリットを知っていきましょう。
メリット
移動時間の短縮
現場に行かずにその場で指示出しや確認を行えるので、移動時間を短縮することができます。
現場に行く時間を考えずに作業ができるので、現場監督の負担が少なくなります。
また、移動にかかる交通費やガソリンなどのコストを抑えることもできます。
人手不足解消
建設業は人手不足が深刻です。
遠隔臨場を導入すれば、わざわざ現場に行かなくても立会など臨場ができます。
通常は現場に行かなければいけないので、一つの現場しか見ることができず人手がいない時に現場監督の負担が大きくなってしまいます。
遠隔臨場であれば、複数の拠点を一度に管理することも可能になります。
人員が足りなくても現場を回すことができるようになるのです。
人材教育
遠隔臨場だと、現場にいない技術者とコミュニケーションをとることができます。
遠隔だと職人の負担も減らせますし、現場にいない職人からアドバイスをもらうことができます。
また、映像を残しておけば後から確認することもできますし、新人教育に活かすことができます。
安全性の向上
現場で立会を行う場合、行ける現場が限られているのでトラブルが発生してもすぐ駆けつけることは難しいです。
しかし、遠隔臨場であればトラブルが発生したらすぐに指示や確認を行うことができるので、トラブルをすぐに鎮静化することができます。
デメリット
導入コストがかかる
遠隔臨場を行うためには、webカメラやマイクなどを用意する必要があります。
その分費用がかかることを認識しておきましょう。
現場によってはカメラを複数用意する必要があるので、その分費用がかさむ可能性があります。
操作を覚える必要がある
遠隔臨場をスムーズに行うためには、カメラやマイクの操作を覚える必要があります。
IT機器に疎い場合は覚えるまでに時間がかかるかもしれません。
機能は一つではないので、効率よく使うためにしっかり操作を覚えましょう。
通信環境が必要
カメラやマイクの接続を安定させるためには、しっかりとした通信環境が必要になります。
中途半端な環境だと、接続が上手くいかなくてトラブルや指示だしなどの対応が遅くなってしまう可能性があります。
しっかりした環境を整えて、安定的な通信を行いましょう。
遠隔臨場はどのくらいのコストがかかる?
遠隔臨場にかかる費用は以下のものになります。
- Webカメラなどの通信機器やモニターの導入費用
- 通信機器の設置費用
- 通信費
- ライセンス代・使用料
費用はツールによって異なるので、上記のような費用がかかることを覚えておきましょう。
遠隔臨場ではコレ!カメラの種類
遠隔臨場に使用できるカメラにはいくつか種類があります。
- ウェアラブルカメラ
- スマートグラス
- スマホやタブレットのカメラ
- クラウドカメラ
それぞれ違いを見ていきましょう。
ウェアラブルカメラ
顔や体に装着できる小型のカメラです。
手を使う必要がないので、作業や移動さながらでも動画を撮影できます。
作業員の目線に合わせた映像を撮影できるので、現場作業員の目線で危険な場所や作業内容を確認することができます。
新人の作業方法を見てアドバイスや指示も出しやすくなります。
そのためにはリアルタイム配信ができる必要があるので、機能がついているか確認してください。
また、手振れ補正がついているのでよく動く建設作業でも使いやすいのがメリットです。
ヘルメットや眼鏡につけて使うことができます。
スマートグラス
マイク・カメラ・オーディオなどが搭載された眼鏡型のカメラデバイスです。
眼鏡としてかけているだけで、カメラで撮影ができマイクが付いていればそのまま会話することもできます。
また、スマートグラスに映像を表示できるものもあるので、情報共有しながら作業することで効率化アップに繋がります。
ただし、通信環境の悪い場所では使えない、セキュリティリスクがあるといった注意点もあります。
スマホやタブレットのカメラ
国土交通省が定めるカメラの参考値に当てはまっていれば、スマホやタブレットのカメラを遠隔臨場として使うこともできます。
既存のスマートフォンやタブレットを使えば、新しく機材を用意しなくても遠隔臨場が可能です。
ビデオ通話機能を使えばリアルタイムで作業現場と繋がることができます。
ただし、手で持って撮影しなければいけないので、高所の作業や両手がふさがる作業中は撮影にリスクが伴うでしょう。
クラウドカメラ
クラウドカメラは、クラウド上に撮影データを保存できるカメラです。
撮影した映像はクラウド上に保存されるので、場所に関係なく映像を確認することができます。
映像保存用のサーバーを用意する必要がありませんし、万が一盗難や破損があってもデータが消える心配がありません。
ただし、インターネットに接続するため、接続が悪いと撮影が中断されたりデータに接続できなかったりする可能性があります。
遠隔臨場で使用できるカメラには要件がある!
遠隔臨場をするカメラは、国土交通省により参考値が決められています。
内容 | 備考 | |
映像 | 画素数:640×480以上 | カラー |
フレームレート:15fps以上 | ||
音声 | マイク:モノラル(1チャンネル)以上 | ー |
スピーカー:モノラル(1チャンネル)以上 |
内容 | |
通信回線速度 | 下り最大50Mbps以上 |
映像・音声 | 転送レート(VBR):平均1Mbps以上 |
導入前に、この数値に達しているか確認してください。
参考になる遠隔臨場の実施事例
遠隔臨場を実際に行った工事の効果と課題をいくつかご紹介します。
これから導入を考えている場合はぜひ参考にしてください。
関東地整 護岸災害復旧工事
撮影時にハンズフリーにできるように、首掛けスタンドにスマホを装着して撮影を行った。
効果
〈施行者〉
- ・現場作業への待ち時間が減った
- ・インターネット回線があればどこでも確認できるので作業効率アップ
- ・画面共有もできるので、立会だけでなく工程会議にも利用できた
〈監督員〉
- ・どこにいても立会を行えるので、現場の作業進行を妨げることがなかった
- ・移動時間がないのが快適
- ・動画映像も綺麗なので細かな確認も行えた
課題
〈施工者〉
- ・通信環境が悪いと映像が途切れてしまう
- ・タブレット型は画面が大きいので、狭い場所の撮影は難しい
〈監督員〉
- ・映像の視野が狭いので、全体像を把握しにくい
- ・風の影響で音声が聞こえづらい(携帯電話と併用して対応)
- ・確認したい場所にカメラを向けるのが大変
東北地整 橋下部工工事
比較的簡単に設置できる定点監視カメラを使用。
定点カメラ3台を設置し打設箇所全体を確認できるようにした。
効果
〈施工者〉
- ・遠隔なので監督とのスケジュール調整がしやすく、立会計画がスムーズになった
- ・両手が塞がらずに撮影できるので、安全性が向上した
- ・感染対策の効果が期待できる
〈監督員〉
- ・執務室にいても施工状況の把握ができるので、監督行為の負担が減った
- ・ズームしても解像度に問題がなく、細部まで確認できた
課題
〈施行者〉
・定点カメラだからか音声の配信が一方通行になり、監督からの指示や応答は携帯電話で行う必要がある
〈監督員〉
・カメラの設置位置によっては画像の乱れや動画配信にタイムラグが生じたので、通信環境の確認を行い障害物のないところに設置する必要がある
関東地整 下流低水護岸災害復旧工事
音声操作機能のついたウェアラブルカメラを使用した。
効果
〈施行者〉
- ・ハンズフリーで操作ができ、作業中でも安全に情報伝達ができた
- ・コロナウイルス感染リスクの回避ができた
- ・発注者の現場までの移動時間を削減できた
〈監督員〉
- ・確認したい箇所をリアルタイムで撮影者に伝えることができ、立会がスムーズになった
- ・コロナウイルス感染対策に繋がった
- ・移動時間の削減ができた
- ・受注者の希望通りの時間帯で立会ができた
- ・大画面に接続することで複数人での立会が可能になった
課題
〈施行者〉
- ・材料検査や出来形検査では使えたが、全体を確認する場合は実際の立会となったので、その場合でも遠隔ができるようになればいいと感じた
〈監督員〉
- ・通信環境により映像や音声が中断する時が多々ある
まとめ
このように、遠隔臨場を取り入れることで施工者も監督員も作業効率アップや安全性向上、移動コストの削減など様々なメリットを得ることができます。
国が推奨していることもあり、遠隔臨場は建設業にとって大きな利益をもたらすものなので、ぜひ導入を進めてみてください。
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