スマートビルをご存じでしょうか。
IoTやAI技術の発展によって建てられるようになったビルであり、近年注目を集めています。
スマートビルとは何なのか、注目理由やメリット・デメリットなどを知っていきましょう。
スマートビルとは
スマートビルとは、IoTやAI技術を用いてビル内のさまざまな設備やデータを一元管理することで、エネルギー効率やビルの快適性などをリアルタイムで効率化できる建物のことです。
建物内の設備を一元管理・制御できるため、エネルギー消費を削減できます。
また、ビル内の利用状況を把握できるため、業務効率化につながります。
スマートビルに使われるIT技術
スマートビルには、さまざまな技術が使われています。
どんな技術が使われているのか見ていきましょう。
IoT
IoTは「モノのインターネット」を意味しており、家電や車など身の回りのさまざまなものをインターネットと接続する技術のことです。
例えば、遠隔操作ができる家電の「スマート家電」やスマートフォンから鍵の操作ができる「スマートロック」などがIoTです。
この技術により、建物とインターネットを接続した「スマートビル」を実現できているのです。
AI
AIは「人工知能」と呼ばれており、大量のデータを蓄積して学習し、新しい知識を増やしていくことができます。
そのため、一度言ったことはずっと覚えていて指示しなくても同じ行動をしたり、収集データに沿って情報を与えてくれたりします。
スマートビルにAIを導入することで、24時間365日データを収集し、ビル設備の効率化に貢献します。
BEMS
BEMSは施設全体のエネルギー使用量を分析・一元管理し、自動制御によって室内環境とエネルギー効率の最適化を実現するシステムです。
エネルギー消費の傾向を把握できるので効率的な改善ができ、ランニングコストの削減にも役立ちます。
BEMSによってエネルギー効率が良くなり、スマートビルが維持できるのです。

上記のようなIT技術を連携させることで、スマートビルが実現できるのです。
これらの技術は今後も重要なものとなっていくでしょう。
スマートビルが注目される背景は?
スマートビルが注目されている理由はいくつかあります。
- セキュリティの強化
- カーボンニュートラルの実現
- 技術の進歩
それぞれ見ていきましょう。
セキュリティの強化
近年、組織的犯罪などが巧妙化してきており、建物全体のセキュリティ強化が重要視されています。
スマートビルでは、センサーや防犯カメラを活用し、不審な動きをリアルタイムで監視します。
高度なセキュリティ体制を整えているスマートビルは、セキュリティ面で安全という点で注目されているのです。
カーボンニュートラルの実現
近年、世界中で脱炭素化を目指す動きが大きくなっています。
脱炭素化社会の実現にはCO2削減が重要であり、スマートビルはエネルギー使用量の効率化ができるためCO2削減に貢献できます。
このことから、スマートビルの増加が望まれるのです。
技術の進歩
IT技術の進歩により、スマートビルが実現できる世の中になりました。
AIや5G、BEMSなどの技術は単体使用でも役立ちますが、連携して使うとさらに便利な機能に変身します。
スマートビルは、これらの技術を組み合わせてできているものなので、技術の発展によって生み出された最新の建物ということで注目を集めているのです。
スマートビルのメリット・デメリット
現代だからこそ実現できるスマートビルですが、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
また、デメリットも確認しておきたいですよね。
ここでスマートビルのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
環境への負荷を軽減する
スマートビルでは、BEMSによってビル全体のエネルギー消費量の一元管理を行っているため、エネルギー効率を高めることができます。
データ分析や機器の連携により、人の少ない場所の照明や空調の使用を抑えて省エネを進められます。
エネルギー供給を効率的に行えるため、環境負荷を減らせます。
建物の資産価値の向上
スマートビルでは、建物空間の詳細情報や人・モノの即位情報を常時取得できるため、取得情報を基に新しいサービス提供につなげられます。
今まで取得できなかった情報を取得してビルの効率化を図れるため、建物自体の資産価値を上げることができます。
安全性の向上
スマートビルでは、AI技術を導入しているので高い安全性を確保できます。
AIを活用した画像認識技術により、エントランスゲートで顔認証を行えるようになりました。
そのため、万が一不審者が侵入してもどんな顔の人物がどこにいるかを把握できます。
また、入退室の状況やデスク利用状況を監視することもでき、ビル全体の安全性を高めることができます。
業務効率化
- 顔認証による出退勤の自動化
- 会議室やカフェスペースの利用状況をオンラインで確認、予約が可能
- 掃除ロボット、警備ロボットの導入による省人化
- 利用者のデータ収集・分析
など、今まで人力で行われていた作業が自動化できるため、作業効率が高まり利益につながる部分に人を割けるようになります。
人件費を減らすことにもつながるため、コスト削減にもつながります。
デメリット
高いコストがかかる
スマートビルでは、ビル全体にIoT機器やセンサーを設置して連携させたり、AIを導入したりする必要があります。
IoT技術やAIの搭載はかなりの初期費用がかかるため、最初にまとまったお金を用意する必要があります。
加えて、システムの定期的なメンテナンスも必要なので、運用コストもかかります。
ただ、スマートビルは省エネとコスト削減が実現できるため、長期的に見れば初期コストを回収できる見込みがあります。
セキュリティ対策が必須
スマートビルは、ビル全体がコンピューターのようなものです。
全ての機器はIoT技術でつながり、AIやBEMSなどの技術が複雑に連動しています。
そのため、ウイルスや不正アクセスがあると、ビル全体が機能しなくなる恐れがあります。
情報漏えいやシステム停止が起こると、取り返しのつかないトラブル発生します。
スマートビルはサイバーテロの格好の餌食になりやすいので、徹底したセキュリティ対策が必要不可欠です。
スマートビルから情報漏えいやシステムエラーが発生すると、利用者にも被害が及ぶ可能性があるので十分な対策を行いましょう。
スマートビルの導入事例3選
東京ミッドタウン八重洲
NTTコミュニケーションズ株式会社が提供する「Smart Data Platform for City」が、東京ミッドタウン八重洲にて運用が開始されました。
スマートビルとして、以下のような機能が提供されています。
ビル内を自走する複数ロボットの制御
清掃や運搬などの異なる役割を持った複数のロボットを制御し、ロボットの稼働状況や位置情報を把握しています。
加えて、ロボットとビル設備を連動させることで、ロボット単独でエレベーターに乗ったりセキュリティドアを通過できたりするようになっています。
自立走行の実現により、ロボットの可動範囲が広がり省人化にもつながります。
ロボットのデリバリーサービス
ロボットが自立走行できることで、オフィスワーカー向けにロボットによるデリバリーサービスの導入が可能になりました。
デリバリーロボットがロビーまで行き、配達員から商品を受け取って注文者に直接配達できます。
今までは注文員がロビーまでいって受け取っていましたが、それをロボットが代行してくれるので手間を省くことができます。
顔認証データと連動したエレベーター制御
セキュリティゲートやエレベーターと顔認証を連動させることで、スムーズな出退勤が実現します。
従業員が顔認証機能の搭載されたセキュリティゲートを通過すると、情報がエレベーターや自動ドアに連携され、勤務フロアを確定します。
これにより、従業員はエレベーターを自分で操作することなく勤務フロアに到着することができます。

東京ポートシティ竹芝
ソフトバンク株式会社と東急不動産株式会社の協力により、最先端のスマートビルに変わっています。
webサイト
Webサイトのトップページには、東京ポートシティ竹芝のリアルタイムデータが表示されます。
建物内外に設置されたカメラやIoTセンサーによって、現在ポートシティにいる人数と性別の割合を表示し、賑わい度を教えてくれます。
あらかじめ混雑度を知ることができるのは、来訪者にとってメリットの一つです。
混雑状況の可視化
エレベーターやビル施設内、トイレなどの混雑状況、気温や湿度といったデータを配信してくれます。
トイレやエレベーターは混雑しやすいので、空いているエリアを教えてくれる機能はとても便利です。
店舗へのマーケティング支援
AIカメラやWi-Fiデータを解析し、各店舗の利用状況の把握、利用者データ分析が行われ、それをレポートにして各店舗に提供します。
これらデータを参考にすることで、ニーズに合った施策を考案・実行できます。
スマートレジデンス
レジデンスタワーの入居者は、顔認証とスマートロック機能によりハンズフリーで入出館できます。
鍵を挿したりカードを通したりしなくていいので手がふさがっていても安心。
また、レジデンスタワー入居者に提供するサービス全てを一つのアプリに統合しています。
エアコンや照明の操作、フィットネスやラウンジの混雑状況確認、電気使用量の確認など、全ての作業をアプリ内で行えます。
このように、東京ポートシティ竹芝は利用者のストレスを軽減するスマートビルを提供しています。
アーバンネット名古屋ネクスタビル
NTTアーバンソリューションズ株式会社とNTT都市開発株式会社が手掛けるスマートビル。
気分に合わせて働く場所を変える働き方(ABW)や、三密回避による安全な空間提供のための機能を提供しています。
施設の混雑状況の共有
スカイテラス、ワークプレイスなどの混雑状況をリアルタイムで共有しています。
スカイテラスでは座席単位での利用状況を把握できます。
授乳室や喫煙室、トイレなどの共用施設、飲食店の混雑状況なども把握できます。
環境情報の提供
温度・湿度・照度・CO2濃度・騒音などの環境情報を随時提供します。
その他、センサー内部で試算した熱中症危険度、自身の計測震度相当値もお知らせします。
人体への危険や災害も検知するので、危険の回避につながります。
従業員や警備員の位置情報を把握
従業員の位置情報を調べ、在籍状況や交流分析、混雑状況をリアルタイムで把握します。
また、警備員の位置情報を把握しておくことで、緊急時の駆け付け対応配備計画に役立ちます。
まとめ
このように、大きなビルではもうスマートビルディング化が進んでいます。
今後もスマートビルは増えていくと思うので、建設業者さんもスマートビルに対応した建物を建てる機会が増えると思います。
今のうちにスマートビルとはどういうものかを理解し、スムーズな施工ができるように準備しておきましょう。
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