建設業者が公共工事の競争入札に参加するためには、経営事項審査を受ける必要があります。
経営状況や経営規模などの企業の実態を知るための審査で、通らないと入札に参加できません。
この経営事項審査で加点対象となっているのがISO9001や14001の認証取得です。
審査を通過するためにも、ISO認証について改めて知っていきましょう。
ISOとは
ISOは「International Organization for Standardization」の略で、国際標準化機構という意味です。
ISOは国際的に通用する規格を作っている組織で、ISOが制定した規格を“ISO規格”と言います。
ISO規格は、国際的な取引をスムーズにするために、製品・サービスの品質を同じものにしてどこでも同じもの提供できるようにしましょうという国際的な基準です。
制定されている規格はいろいろあり、製品そのものに対する規格もあれば企業の品質活動に対する規格もあります。
品質に対する規格は「ISO9001」、環境活動に対する規格は「ISO14001」と呼ばれ、建設業者でも取得している人が多いものになります。
ISOの目的
ISO(国際標準化機構)の目的は、製品・技術・医療・農業など様々な分野における世界基準を定め、標準化することで国際貿易の発展に寄与することです。
ISOはなぜ必要?
では、なぜISO認証が必要なのでしょうか。
ISO認証は、会社経営のために必要なものなのです。
上の説明だと、ISO規格は「製品・サービスの品質を一定にして国際的に通用するようにするための基準」と認識できますが、国際的に通用する業務経営の仕組みを作るものでもあるのです。
顧客ニーズ・競合の動き・社会情勢・法律の変更など、様々な要因で企業の経営は影響を受けます。
加えて、企業の社会貢献度も重要視されるようになり、社会にどれくらい後継しているのか、企業として何にどういう思いで取り組んでいるのかを発信しなければ信用に繋がらない世の中になってきているのです。
ISOは、そんな世の中に企業が順応するための手段であり、正しい経営を行っているというのを周りに示すためのものなのです。

ISO認証を取得するメリット、デメリット
ISO認証にはどんなメリット・デメリットがあるのか把握していきましょう。
メリット
組織の社会的信用度が上がる
ISO認証は国際的な規格なので、ISO認証を得ることは国際的に認められた企業である証明になります。
そのため、企業の社会的信用度が上がり、取引がしやすくなるでしょう。
事業への参入機会が増える
事業に参入する条件としてISO認証取得をあげているものもあるため、ISO認証を取得しておくことで事業への参入機会を増やすことができます。
これは企業拡大にも繋がるので、とても重要です。
第三者視点で問題点を発見できる
ISO認証を取得する過程で、認証機関による審査が行われます。
認証機関は、組織を管理・運営するために必要な「要求事項」に基づいて審査を行い、要求事項を満たしているか否かを判断します。
満たしていない部分が見つかった場合は不適合となり、企業はその不適合箇所を改善するよう努めます。
このように、第三者の視点で経営の適合・不適合点を見つけてもらえるため、経営に関して改めてかんがえることができるのです。
継続的に改善していける
ISO認証は一度取ったら終わりではなく、ISO認証を維持するために毎年審査を受ける必要があります。
これにより、企業は常に品質改善や顧客満足度などISO認証を維持する取り組みを意識的に行えるため、常にモチベーション高く企業運営をしていくことができます。
加点対象である
建設業にとっては、公共工事の入札に参加しやすくなるプラス要素です。
公共工事では、経営審査事項の点数に主観点の点数を加えた総合点で入札に参加できるか判断されます。
主観点とは、発注者が独自に定めた審査対象に対する点数のことです。
自治体によってはISO認証であるISO9001やISO14001を加点対象としているところもあるので、入札に参加しやすくなるためにISO認証を取る企業も多いようです。
デメリット
継続取得が必要
上記でも話したように、ISO認証は一度取得して終わりではありません。
取得し続けるためには、品質改善やシステムの向上などをし続ける必要があるので、その分費用や人的コストが発生します。
認証取得の効果はすぐに出ない
ISO認証を取得しても、すぐにその効果がでるわけではありません。
製品・サービスを改善していくうちに徐々に効果を表すものなので、即効性を期待してしまうと中々反映されないことでモチベーションが低下しやすいです。
書類の作成や記録をする手間が増える
ISO認証において多くの人が悩んでいるのは、書類作成や記録をしなければいけないことです。
会社を運営していく上で他の書類の処理もあると思うので、それに加えて書類作成や記録が増えるのはかなりの負担ですよね。
費用はどのくらいかかる?
ISO認証では、取得費用と維持費用の二つがかかります。
取得費用
取得費用では、基本費用+コンサルティング費用がかかるのが一般的です。
コンサルタントを入れなければ30~100万円ほど、コンサルタントを入れれば40~100万円ほどの金額がかかるでしょう。
基本費用
基本費用は必ず掛かる費用で、審査料、ISO登録料、審査員の移動・宿泊費がかかります。
審査料は企業人数によって異なるので、自社の人数でどのくらいの費用がかかるのか確認してみてください。
登録料は3~5万円が相場です。
審査が現地開催の場合は、審査員の移動や宿泊費がかかります。
コンサルティング費用
コンサルティング費用とは、経営コンサルタントに社員教育や申請サポートを行ってもらうための費用です。
企業だけではISO認証を取得するための準備をするのが難しいので、経験と知識豊富なコンサルタントに手伝ってもらうのです。
コンサルティング費用は、50万円以上かかると考えておくのがいいでしょう。
維持費用
維持費用は、取得費用の3割程度が一般的なようです。
しかし、最低でも30万円はかかると言われているので把握しておきましょう。
コンサルタントなしでも取得できるのか
コンサルタントの利用は必須ではないので、少しでも費用を抑えたい場合はコンサルタントを利用しない選択肢もあります。
しかし、コンサルタントがいないと全て自力で調べて書類を集めてマネジメントの仕方を学んでいかなければいけません。
自分の力にはなりますが、通常業務も行いながらISO認証取得の準備もするには時間も人も足りないのが現状ではないでしょうか。
コンサルタントは正しい知識で経営に関するアドバイスをしたり、必要な書類を集めたり作成サポートをしてくれます。
ISO認証取得に関する知識を持つコンサルタントにお願いすることで、かかる人的コストを削減できるのです。
また、ISO認証取得の知識を持っているため、企業の経営状況を分析してISO認証取得ができるように導いてくれます。
コンサルタントを使うことでかなり効率よくISO認証を取ることができるでしょう。
取得しない、取得をやめる企業もいる。その理由は?
ISO認証の取得をやめたい、取得しないと考えている企業も多く存在します。
理由としては、やはり費用が掛かることと維持のための書類作成が大変なことが挙げられます。
これらのデメリットを考えると、取引先から要求されたなどの外的要因がなければ取得に進まない企業がいるのも頷けます。
しかし、それは一昔前のISO認証への認識です。
特に最新のISO9001は負担がかからないような規格になっているため、取得後の維持もしやすくなっているようです。
昔のISO認証で継続している場合は、企業規模に合わない大企業型の古いISO認証を導入している可能性があるので、一度見直してみてください。
また、審査の基準も昔と今では違います。
昔のISOでは、要求に対して大企業レベルの対応ができているかが審査の合否に深く関係していました。
そのため、中小企業にとっては要求レベルが高く、毎年の審査が負担になっていました。
しかし、今のISOは最終的な実行内容が審査対象であり、それを行うまでの過程は自由にやってよくなりました。
企業に合ったやり方で要求に答えれば良くなったので、審査通過のハードルがかなり下がったようです。
ISOを取得する手順
ISO取得するにはどのような手順を踏めばいいのか見ていきましょう。
取得計画を立てる
まずはISO認証を取得するための計画を立てます。
- 取得目的
- 何の規格を取得したいか決める
- いつまでに取得するか
- 取得責任者は誰か
- 自力でやるか、コンサルタントをつけるか
- 予算はいくらか
- どこの審査機関に審査依頼するか
これらを決めることで、ISO認証取得の明確なスケジュールを立てることができ、効率的に取得することができます。
特に審査機関選びは大事で、機関によって費用や審査の柔軟性が異なるので慎重に選ぶようにしましょう。
取得したいISO認証のマネジメントシステムを構築する
自社にあったやり方で、自社にあった規模のシステムを構築するよう心がけましょう。
コンサルタントの意見を参考にするのはいいですが、全て言われるがままだと企業に合わないシステムになってしまう可能性があります。
自社の経営方針や課題を分析し、どのようなルールを策定すればいいのか慎重に決めていきましょう。
構築したシステムを運用する
マネジメントシステム作成が完了したら、次は運用です。
実際に自社で使って不便な点はないか、PDCAを回して改善点を見つけていきます。
- ①運用前に社内教育を行い、社員にシステムについて理解してもらいます。
- ➁システムに関する理解が浸透したら運用を開始し、改善点を洗い出します。
- ③実際に運用ができているか、内部監査を行います。
- ④内部監査で発見した課題に対する改善を行います。
- ⑤経営陣によるマネジメントレビューを行い、総合的な結果から改善はみられるか判断します。
- ⑥ここで指摘点があった場合は再度システムの見直し・改善を行います。
この作業により、質の高いマネジメントシステムが出来上がるのです。
申請する
最初に選んだ審査機関に審査の申し込みをします。
審査を受ける
審査は、一次審査と二次審査があります。
一次審査では、策定したマネジメントシステムなどの文書を中心に審査します。
策定したシステムが規格に則したものなのかを判断されます。
指摘事項があれば改善を求められ、改善したものを期限内に提出する必要があります。
二次審査では、実際にシステムを運用している現場を見ながら、正しく運用されているかを審査します。
指摘事項があれば、一次審査同様期限内に再提出する必要があります。
認証登録をする
審査が通れば、審査登録に進めます。
最終報告と登録料の請求書が送られてきて、入金後に認証書が発行されます。
無事認証が取得できたら登録番号が付与され、認証済みロゴマークの使用が許可されます。
維持審査を行う
ISO認証の有効期限は3年です。
そのため、認証を取得した1年後と2年後に維持審査を行います。
審査内容としては、
- 認証したシステムが機能しているか
- マネジメントレビューが継続的に実施されているか
- 課題の発見と改善を継続的に行えているか
など、システムの運用をしっかり行えているかを確認します。
この審査により新たに認証書が発行されることはなく、審査は1段階のみです。
更新審査を行う
認証を取得してから3年後は、維持審査ではなく更新審査を行います。
次の3年間も認証を保持できるかどうかの審査なので、最初の審査のように文書審査と実地審査をする場合が多いです。
3年間の運用状況全てが審査対象となる大掛かりなものなので、審査日も協議して予め決定され、1日かけて審査を行います。
どのくらい?認証取得までにかかる期間について
認証を取得するまでの期間は、コンサルタントを使った場合で半年程度、自力でやった場合で1年以上かかると考えて計画を立ててください。
まとめ
ISO認証は経営を正しくしていく上で必要となる認証であり、「言われたから取得した」ではもったいないです!
企業の社会的信用度や事業参入機会を高めるためにも、ISO認証を正しく理解し、継続して取得していきましょう。
コメント