事業活動をする上で発生した産業廃棄物は、有害物質などが発生するリスクが高く一般ごみとは分けて処理されます。
処理に時間と手間がかかるため、「マニフェスト」と呼ばれる産業廃棄物管理票が必要になるのです。
マニフェストとは何なのか、流れや書き方、罰則など、知っておくべき情報を紹介していきます。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは
産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは、排出した産業廃棄物の収集・運搬・処理が適切に行われたかどうかを確認し管理するための票です。
産業廃棄物の排出業者がその処理を第三者に委託する場合は必ず交付しなければいけません。
産業廃棄物を廃棄する際にマニフェストを交付し、廃棄物の処理を把握・管理する仕組みを「マニフェスト制度」といいます。
発行方法は2種類
マニフェストには紙媒体と電子の2つの発行方法があります。
紙マニフェストは全国の都道府県協会において1部25円で販売しており、通常100部単位で購入できます。
電子マニフェストはこちらから登録して購入できます。
マニフェストには3種類ある
産業廃棄物マニフェストには、
「事業系マニフェスト」「建設系廃棄物マニフェスト」「積替保管用マニフェスト」
の3種類があります。
どれを使うかは廃棄物の種類によって異なります。
それぞれの廃棄物の特徴をまとめたので見てみてください。
事業系マニフェスト | 運搬業者を通して直接最終処分場へ運搬する際に必要となる管理票。
建設廃棄物以外の廃棄物が対象 |
建設系廃棄物マニフェスト | 建築や解体など、建設現場で発生した産業廃棄物を運搬する際に必要となる管理票。 |
積立保管用マニフェスト | 産業廃棄物を積替保管施設などに一度保管してから処分業者に持ち込む際に用いられる |
なぜ義務化されたの?
マニフェスト制度が義務化されたのは、次の理由があります。
- 産業廃棄物排出業者の責任を明確化するため
- 不法投棄を防ぐため
マニフェスト制度の導入前は、産業廃棄物がどう運搬されてどのような処理が行われているのかといった具体的な流れは記録されていませんでした。
誰の廃棄物が今どこにあるのかということが不明確だと、それを逆手にとって悪いことを考える人がでてきます。
責任の所在を明らかにすることで不法投棄をする事業者も減るため、地球環境のことも考えてマニフェスト制度が施行され、マニフェストの交付が義務化されたのです。
【イラストで説明】マニフェストの流れ
マニフェストは7枚つづりになっており、それぞれ保管や渡される先が異なります。
マニフェストは排出事業者から処理運搬業者、中間処理業者、収集運搬業者、最終処分業者へと渡り、役割が完了した時点で排出事業者へ返送されます。
【マニフェスト7枚の詳細と保管する業者】
保管する業者 | 票の名前 | 詳細 |
排出業者 | A票 | 排出業者の保管用 |
B2票 | 運搬終了時、運搬業者から排出業者に返送される | |
D票 | 処分終了時、処理業者から排出業者に返送される | |
E票 | 最終処分終了時、処理業者から排出業者に返送される | |
運搬業者 | B1票 | 運搬業者の控え |
C2票 | 処分終了時、処理業者から運搬業者に返送される | |
処理業者 | C1票 | 処分業者の控え |
【マニフェストの流れ】
マニフェストは5年間の保管が必要!
マニフェストの交付を行った場合、伝票の送付を受けた日もしくは送付した日から5年間、保管する義務があります。
マニフェストA票に関しては、交付の日から5年間保管してください。
いつ頃返送される?
マニフェストはそれぞれの役割が終わったら返送されるように定められていて、返送期間も決められています。
収集運搬業者・処分業者からの返却期限(B2票・D票):90日以内
処分業者からの返却期限(E票):180日以内
万が一この期間内にマニフェストが返送されない場合は、ただちに運搬業者または処理業者に連絡をして、返送状況を確認してください。
その後、「措置内容等報告書」に確認した処理状況・講じた処置内容などを記入し、行政に提出する必要があります。
マニフェストの書き方
マニフェストは複写式になっているため、A票にのみ記載すれば他の票にも記載されます。
紙媒体のマニフェストに記載する場合、複写を意識して少し筆圧を強めに記載するようにしましょう。
記載内容
➀交付年月日
マニフェストを交付した日
➁交付担当者
マニフェストの交付を担当した人の名前
③排出事業者
排出事業者の名称または氏名・住所・電話番号
④排出事業場
廃出場の名称・所在地・電話番号
⑤産業廃棄物
排出する産業廃棄物の種類
⑥数量
排出する産業廃棄物の量
⑦荷姿
バラ積み・フレコンバック入り・ドラム缶などの荷姿
⑧産業廃棄物の名称
廃タイヤ、廃冷蔵庫など、廃棄物の詳細が分かるように記入
⑨有害物質等
有害物質が含まれているかどうかを記入
⑩処分方法
圧縮・粉砕・焼却など、処分方法を記入
⑪中間処理産業廃棄物
中間処理業者が残さ物を処理委託する際に記入
⑫最終処分の場所
最終処分予定の場所を記入
⑬運搬受託者
運搬を委託する収集運搬業者の名称
⑭運搬先の事業場
契約している処分業者の事業場
⑮処分受託者
契約している処分業者の名称
⑯積替えまたは保管
積替保管を行う際は、名称や住所を記入

記入する項目は多いですが、慣れればすぐに記入できると思います。手間がかからない分、電子マニフェストがおすすめです。
違反したら罰則はある!?
産業廃棄物のマニフェスト交付、保管の義務に違反した場合、罰則が科せられます。
- マニフェストを交付しない
- 虚偽内容の記載
- 報告義務違反
など、マニフェストの義務に違反した場合は刑事処分に科せられ、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
さらに不適正処理が行われた場合、都道府県からの措置命令(不法投棄された廃棄物の除去などを講じる命令)を受けることがあります。
この措置命令に従わない場合は刑事処分に科せられ、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方に処されます。
罰則は重いものなので、必ず義務に従うようにしましょう。
建設業の違反は他にもある
建設工事で発生した産業廃棄物は、排出者である元請け業者が処理する決まりになっています。
なお、下請け業者の施工によって発生した産業廃棄物も、元請け業者が処理する必要があるので覚えておきましょう。
- 無許可の下請け業者に産業廃棄物の処理をさせる
- 下請け業者に産業廃棄物を持ち帰らせ、下請け業者の廃棄物として処理させる
これらの処理をした場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方に処されてしまうのでくれぐれもやらないようにしてください。
マニフェストが不要なケースとは?
- 国に委託して処理する場合
- 都道府県・市区町村に委託して処理する場合
- 都道府県知事の支持を受けた業者に委託して処理する場合
- 古紙や空き缶、屑鉄など、専ら物を専ら業者に委託して処理する場合
- 再生利用認定制度の認定を受けた業者に委託して処理する場合
上記のケースはマニフェストの交付が不要になります。
ただし、対象となる産業廃棄物は以下のもののみになるので事前に確認してください。
- 〇自転車用廃ゴム製品
- 〇廃プラスチック類
- 〇化製場から排出される廃肉骨粉
- 〇金属
- 〇すぐ腐敗しないように適切な除湿措置をした廃木材
- 〇無機性の建設汚泥
- 〇半導体製造や太陽電池製造、シリコンウエハ製造の過程で生じるシリコン含有汚泥で、排水のろ過膜を用いた処理に伴って生じた物
紛失した場合、どうしたらいい…?
万が一保管するマニフェストを紛失してしまった場合、運搬業者や処理業者が保管しているマニフェストのコピーをもらって代用しましょう。
- A票を紛失した場合はB1票(運搬業者の控え)のコピーで代用
- B2票を紛失した場合はB1票(運搬業者の控え)のコピーで代用
- D票を紛失した場合はC1票(処分業者の控え)のコピーで代用
- E票を紛失した場合はC1票(処分業者の控え)のコピーで代用
代用する際は、運搬業者・処分業者の会社名・運搬担当者名・運搬/処分終了日の記載があることを確認してください。
E票の代用をする場合は、最終処分を行った場所と所在地の記載があることも確認してください。
違反しないように適切なマニフェストを作成しよう
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付、返送、保管は義務です。
漏れのないように、必ず処理前に準備しておきましょう!
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