建設業や製造業の方は、PL保険には加入済みかもしれませんが、「E&O保険」はご存じでしょうか。
PL保険で補えない部分も補償してくれる保険なので、ぜひどういう内容なのか確認していってください。
E&O保険とは?
E&O保険とは、「Errors & Omissions」の略で、日本語で「過失と怠慢」を意味します。
その意味の通り、業務遂行中の過失や怠慢が原因で発生する損害を補償する保険なのです。
E&O保険では、過失や怠慢によって発生した身体障害または財物損壊を伴わない経済的損失を補償します。
E&O保険の補償内容は、賠償責任保険やPL保険では補償範囲に入っていない部分になるので、そちらでは補えない損害を補償してくれるという強みがあります。
E&O保険は、もともと弁護士や公認会計士などの士業の方を対象に専門職の賠償責任保険として海外で使われていました。
弁護士や公認会計士、税理士などの国家資格を必要とする専門職業人は、高度な専門知識やスキルを求められます。
社会的地位は高いですが、その分一般的な職種よりも厳しい注意義務を求められます。
もしも業務状の注意義務を怠り、過失を犯して顧客に経済的損害を与えてしまった場合、法律上の賠償責任を負う可能性が高いです。
そのため、経済的損害に対する補償をしてくれるE&O保険に加入している士業の方が多いのです。
現在では、さまざまな分野で経済的損害を補償する保険として、製造業や建設業、IT業界などで重宝されています。
PL保険との違い
PL保険とは、「Product Liability」の略で、日本語で「生産物賠償責任保険」のことを言います。
製造業者等が製造または販売した製品の欠陥が原因で、他人を死傷させたり他人の物を壊したりしてしまった場合に損害を補償してくれる保険です。
多くの企業がPL保険に加入していると思いますが、PL保険では身体障害や財物損壊を伴わない経済損害は補償対象外となっています。
そのため、PL保険に加えてE&O保険にも加入することで、万全な体制で事業を営むことができるのです。
E&O保険への加入は義務ではありませんが、取引が多くいつ経済的損害を与えてしまうか分からない業種にとっては、E&O保険に入っておいた方が万が一の損益を減らすことができます。
事故内容による適用保険の違い
PL保険とE&O保険の補償範囲はどう違うのか、まだはっきり分からない方も多いと思います。
二つの補償内容を比較するために、具体的な事故内容を紹介してどちらが当てはまるのか紹介しようと思います。
ぜひ確認して、PL保険とE&O保険の補償範囲の違いを知っていってください。
建設業
事故内容 | 賠償責任の内容 | 適用保険 |
ショッピングモールの建設中、設計図に誤りがあることが発覚し、工期の遅れが発生。 それにより、建物の完成が遅れ、ショッピングモールの売上に損益を与えた |
建物建設中に発生した、身体障害や財物損壊を伴わない経済的損害 | E&O保険 |
住宅の完成後、瓦の設置が不安定で瓦が落下し、下にいた住人が怪我をした | 製造者等が製造した製品の欠陥が原因で第三者に怪我をさせた | PL保険 |
建物の完成後、排水管の取り付けに不具合があり建物が水浸しに。
建物のリフォームを依頼した企業に営業停止など経済的損害を与えた |
建物完成後に発生した、身体障害や財物損壊を伴わない経済的損害 | E&O保険 |
製造業
事故内容 | 賠償責任の内容 | 適用保険 |
メーカーが製造した機械を納入後、審査要件に合わないことが発覚。 全て回収し要件に合うように作り直す期間が生じ、取引先に営業効率の低下を招いた |
製品の欠陥による身体障害や財物損壊を伴わない経済的損害 | E&O保険 |
依頼された電子機器を納入後、取引先から「機械が動かない」との連絡があり、欠陥品であると発覚。
修理が必要となり、納品日を大幅に遅れて生産量・販売量に影響を出してしまった |
製品の欠陥による身体障害や財物損壊を伴わない経済的損害 | E&O保険 |
化粧品メーカーが新商品を発表したところ、その製品に規定量を超えた薬品が使われており、副作用で多くの購入者に発疹ができてしまった | 製造した製品の欠陥により、利用者の身体に被害を与えた | PL保険 |

こうして見てみると、PL保険はBtoC企業、BtoB企業どちらも使うことができ、E&O保険はBtoB企業により必要な保険であることが分かります。
BtoB企業はぜひ、PL保険に加えてE&O保険にも加入することを検討してください。
E&O保険のメリット
では、E&O保険に加入するメリットを見ていきましょう。
PL保険や賠償責任保険では補えない範囲の損害を補償してくれる
やはり一番は、PL保険や賠償責任保険では補えない範囲を補償してくれるところです。
特にBtoB企業は、BtoC企業に比べて取引先に経済的損失を与える可能性が高いです。
そのため、PL保険と同時にE&O保険に加入することで、広範囲のリスクを補うことができます。
海外企業との取引がしやすくなる
E&O保険は、一般的な賠償責任保険では補えない「純粋経済損害」を補償してくれます。
そのため、海外企業と取引をする際はE&O保険の加入が求められます。
先にE&O保険に加入していれば、海外企業と取引をする際にスムーズな手続きができます。
ビジネスをする上でスピード感は重要なので、海外企業との取引を考えている場合はぜひ早めに加入しましょう。
事務手続きが楽になる
対象となる業務遂行をまとめて対象とする契約方式を利用できるので、その場合保険の更改手続きなどの事務手続きを省略できます。
事務手続きが楽になるので、E&O保険に加入しても事務員さんの負担はそこまで増えないですむでしょう。
契約によっては保険料が安くなる
包括的な契約方式を利用する場合、保険会社の事務コストを削減することにもつながります。
そのため、その分保険料が安くなる可能性があります。

このように、通常よりコストはかかりますが、万が一の損害を考えたらE&O保険に加入した方が安心できます。
取引相手が大企業であるほどトラブル発生時の損失は莫大になるので、加入することをおすすめします。
E&O保険の注意点
では、E&O保険に加入する際の注意点も確認しておきましょう。
免責事項を確認する
E&O保険にも免責事項(保険料が支払われないケース)があります。
ITの例では、納入後1カ月以内に起きた顧客からのクレームは免責事項に該当します。
建設業の例では、建物を引き渡してから10年経過後、その建物に対する損害賠償請求は免責事項です。
このように、保険会社や業種によって免責事項が決められているので、事前に確認しておきましょう。
金額が大きい場合は保険会社一社では賄えない
保険金額が大きい場合、複数の保険会社を組み合わせた保険プログラムを組成することもあるようです。
保険内容が複雑になるので、E&O保険に精通している保険会社に依頼することをおすすめします。
まとめ
E&O保険は、企業が事業を営む上で加入すべき保険です。
万が一の時「入っていてよかった」と思えるように、今からE&O保険への加入を検討してみてください。
E&O保険を取り扱っている保険会社はいくつかあるので、資料請求をして内容を比較してみてください。
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