労働上限規制など、働き方改革の施行によって発生する問題を「2024年問題」と言いますが、建設業は今この問題に直面しています。
これらの問題を解決するために、ITの知識を活かして現場をさまざまな方向から支える「建設ディレクター」という職域が新しく誕生しました。
今回は、建設ディレクターについて詳しく紹介していこうと思います。
建設ディレクターとは
建設ディレクターとは、ITスキルとコミュニケーションスキルを使って建設現場の仕事を支援する新しい職域のことです。
現場のデスクワークだけでなく、3Dデータのドローンの操縦を行う場合もあるようです。
建設ディレクターが現場の支援を行うことで、技術者や現場作業員の負担が減り、労働時間の上限規制を始めとした働き方改革を実現できます。
誕生の背景
建設ディレクターという職域が新しく誕生したのは、建設業の人手不足と2024年問題がきっかけです。
建設業は人手不足が深刻で、技術者であっても事務処理の仕事を行っている会社もあります。
現場でメインの仕事をした後、事務所に戻って書類作成を行うのは効率が悪く、技術者の負担が大きすぎます。
人手不足が続くと残業時間の上限規制にも引っかかる恐れもあるため、分業を進めていく必要があります。
また、建設業はまだアナログなところが多いですが、働き方改革を推進して従業員の負担を削減するためにはIT技術の導入が必須です。
このような建設業の現状から、バックオフィス業務をこなすだけでなくITスキルを身に付けてIT建機を扱える職種である「建設ディレクター」が誕生したのです。
仕事内容について
建設ディレクターは具体的にどんな仕事を行うのでしょうか。
建設ディレクターの仕事内容は次の通りです。
- 工事書類の作成(工事着手時の書類・計画書・施工中の資料・品質管理書類など)
- 作業日報の作成
- 安全管理書類の不備確認
- 施工写真の管理
- 3Dデータの作成
- 測量補助(ドローンを使った測量)
- 請求書や書類のチェック
書類作成などのバックオフィス業務だけでなく、IT技術を使った現場サポート業務も行います。
業務内容は会社によって異なる点もあるので、建設ディレクターとして入社したい場合は仕事内容を事前に確認してください。
資格は必要?
建設ディレクターには、一般社団法人の建設ディレクター協会が実施する「建設ディレクター育成講座」という民間資格があります。
全8回、計48時間の講座を受講し、修了テストに合格することで建設ディレクターとして認定されます。
合格者には認定証が発行されます。
育成講座では、建設業の書類作成業務に必要不可欠な知識とコミュニケーションの幅を広げるための手法を学ぶことができます。
なお、育成講座はオンデマンド講座とライブ講座を組み合わせたものがあります。
双方向のコミュニケーションを大事にしているため、一方通行のオンデマンド動画だけでなくグループワークを交えたオンライン講座を組み合わせたものがあるようです。
申し込みの流れは次の通りです。
オンライン説明会→サイトから申し込み→入金→育成講座ご利用開始→プレ交流会(システムの説明や交流会)→受講
まずは説明会に参加する必要があるので、受講を考えている場合は逆算して受講スケジュールを立てましょう。
合格率
合格率に関してですが、建設ディレクター協会が公表していないので不明です。
しかし、建設ディレクター育成講座は建設業の基礎を学ぶ講座なのでそこまで難易度は高くないと考えられます。
年収はどのくらいか
建設ディレクターの年収は、400万円~1000万円と幅広いです。
バックオフィス業務だけでなくITスキルも必要になるので、スキルを増やして携わる業務が増えれば収入を上げていくことができます。
年収1000万円を手にする夢のある職種なので、手に職をつけて稼ぎたい人にぴったりです。
どんな人に向いているか
マルチタスクが得意
建設ディレクターは書類作成だけでなく、図面の作成やドローンを使った測量など、さまざまな業務を同時に行います。
そのため、マルチタスクをこなすことが得意な人に向いています。
逆に一つのことを極めたい、同時進行が苦手な人には向いていません。
建設業を支えたい人
建設ディレクターは建設現場を支える仕事です。
建設業に興味が合って、建物を建てる手伝いがしたいという思いがある人の方が楽しみながら続けることができるでしょう。
そのため、建設業を支える仕事がしたい人に向いています。
IT技術に興味がある
建設ディレクターはITスキルを身に付ける必要があります。
そのため、3Dデータの作成やドローンの操縦などのIT技術に興味があり、スキルを身に付けたい人に向いています。
コツコツ取り組むことが好き
書類作成やデータの管理など、細かい作業を行うことが多いため、細かい作業をコツコツと行うことが好きな人に向いています。
人とコミュニケーションをとるのが好き
建設ディレクターは現場とのコミュニケーションも欠かせません。
データの情報共有、ドローンや3Dモデルの使用に関する相談など、建設工事に関わる部分で現場と活発にコミュニケーションを取っていく必要があります。
そのため、立場や年齢の違う人と分け隔てなくコミュニケーションをとれる能力がある人に向いています。
新しいことをやることが好き
建設ディレクターが任されるスキルは、IT技術が発達するにつれてどんどん増えていくと考えられます。
そのため、新しいことを覚えるのが好きで、自分のスキルを増やしていきたい人に向いています。

【企業目線】建設ディレクターを雇うメリット・デメリット
企業としては、建設ディレクターを社内に導入するメリット・デメリットを知っておきたいですよね。
ここで建設ディレクターを雇うメリット・デメリットを紹介するので、ぜひ確認していってください。
メリット
従業員の負担を削減
建設ディレクターが書類作成などのバックオフィス業務を行ってくれるので、現場作業員は現場の仕事に集中できます。
分業が実現できるので、従業員一人一人の負担を減らすことができます。
働き方改革の促進
分業を行って従業員一人一人の負担が減ることで、人手不足の解消、残業時間の削減など働き方改革を促進できます。
働き方改革が進むことで社内環境も良くなり、若い人材を集めやすくなるというメリットもあります。
女性従業員の獲得につながる
建設ディレクターの仕事は力仕事ではないので、女性も十分に活躍できる領域です。
実際に建設ディレクターとして働いている男女比率を見ても、6割以上が女性という結果が出ています。
現場の仕事は力仕事が多く男社会なので女性を雇うのはハードルが高い部分もあると思います。
しかし、建設ディレクターとして女性を雇うことで、新しい風を吹かせることができるでしょう。
新規雇用の創出ができますし、社内体制を変えるきっかけとなります。
新しい働き方が実現できる
建設ディレクターはITスキルを持っているので、社内にIT技術を導入しやすくなります。
ITツールの導入が進めば、テレワークや時短勤務など、新しい働き方を取り入れるきっかけにもなります。
ITツールを使うことで場所に囚われることなく働けるようになるので、従業員の働きやすさにもつながります。
若手の獲得につながる
建設ディレクターはITスキルが身に付く職種なので、若い頃からIT技術に慣れ親しんでいる若手の興味を引くものです。
実際、建設ディレクター育成講座を受ける年代は20~30代が多いので、若い層の従業員を増やすことができます。
若手が活躍する会社は活発で雰囲気も明るくなるので、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
デメリット
人件費がかかる
現場職員とは別に従業員を雇うことになるので、その分人件費がかかります。
会社の規模や欲しい人材を明確にして、本当に建設ディレクターが必要かどうか検討してください。
業務内容が具体的に決まっていない
建設ディレクターの業務は、まだ具体的に決まっていません。
会社によって行う業務量も変わってくるので、どの範囲を建設ディレクターに任せるのか、事前に決めておく必要があります。
そうしないと、バックオフィス業務とIT技術の全般を建設ディレクターが担う羽目になり、建設ディレクターの負担ばかり大きくなってしまう恐れがあります。
そうなると働き方改革も推進していけないので、十分注意しましょう。
転職する人が増える
もともと事務としてバックオフィス業務を行っていた人が建設ディレクターとしてスキルをつけると、スキルが上がるため転職しやすくなります。
建設ディレクターが辞めてしまわないように、同時に福利厚生など社内環境を良くしていく必要があります。
民間資格とは言え資格を取っているので、資格手当を出して昇給につなげるという方法も、従業員のモチベーションアップになるのでおすすめです。
まとめ
建設ディレクターは、今後の建設業に欠かせない存在です。
従業員満足度を上げて職場の環境を良くしていくためにも、建設ディレクターの導入準備を始めましょう。
建設ディレクターになりたいと考えている人は、講座を受講してスキルを身に付けていきましょう。
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