キャッシュコンバージョンサイクルをご存じでしょうか。
資金繰りをよくするために重要な数値になります。
今回は、キャッシュコンバージョンサイクルとは何か、計算方法、改善方法などを紹介していきます。
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)とは
キャッシュコンバージョンサイクルとは、企業が商品を仕入れて仕入代金を支払ってから、売上代金を回収するまでにかかる日数を計算した指標です。
この数値が少なければ少ないほど、資金繰りが上手くいっている証拠になります。
CCCと略されて呼ばれることも多いです。
CCCにはプラスとマイナスの数値がある
通常は、仕入→仕入れ代金の支払い→商品の販売→売上代金の回収という流れをとります。
これはCCCがプラスの状態です。
しかし、企業によっては仕入代金を支払う前に商品が売れて代金を回収できてしまう場合があります。
これはCCCがマイナスの状態です。
マイナスなら資金繰りが上手くいっているため、銀行からお金を借りる必要もありません。
資金繰りにどう役立つの?重要性は?
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)は資金繰りにどう役立つのか気になりますよね。
一番は、資金繰りが上手くいっているかどうかを数値化してくれるので、現状を明確に把握することができます。
また、財務諸表の数値のみで計算できるので、資金繰りの把握が簡単にできるというメリットもあります。
【画像あり】キャッシュコンバージョンサイクルの計算方法
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の計算式は次のものです。
売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数
例をあげるので、画像を見ながら計算してみてください。
商品の販売をその20日後に行いました。
商品の売上は販売から50日後に回収することができました。
この場合、仕入れから販売代金回収まで90日かかっています。
そして、仕入をしてから支払いをするまでが20日あります。
したがって、仕入額の支払いをしてから販売代金を回収するまでの70日間、資金繰りが苦しくなります。
この支払ってから回収までのタイムラグがCCCになります。
そのため、50+40-20=70日がキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)となるのです。
ここで、3種類の回転日数について計算方法などと一緒に説明していこうと思います。
売上債権回転日数
商品を販売して売り上げが発生してから回収にかかるまでの日数のことです。
売上債権回転日数の計算方法は以下の通りです。
- 売上債権÷売上高×365日
- 売上債権=受取手形+売掛金-前受け金
売上債権は、取引先との取引間で生じた債権のことで、受取手形や売掛金などが当てはまります。
その場で支払うものではなく、掛けによる商取引で発生する債権が売上債権です。
棚卸資産回転日数
仕入れた商品が販売されるまでの日数のことです。
棚卸資産回転日数の計算方法は以下の通りです。
- 棚卸資産÷売上原価×365日
- 棚卸資産=商品+製品+原材料+仕掛品等
棚卸資産とは、販売・加工する目的で仕入れ一時的に保有している資産のことで、いわゆる「在庫」です。
棚卸資産には、製品・半製品・原材料・仕掛品(製造途中でまだ完成していない製品のこと)などが該当します。
仕入債務回転日数
商品や原材料を仕入れてから仕入額を支払うまでの日数のことを言います。
仕入債務回転日数の計算方法は以下の通りです。
- 仕入債務÷仕入債務支払高×365日
- 仕入債務=仕入手形+買掛金-前払金
仕入債務とは、商品や原材料を購入し、すぐに支払わずに後で支払うことを約束した債務のことです。
買掛金や支払手形などが当てはまります。

このように、キャッシュコンバージョンサイクルは簡単に計算できます。ぜひ財務諸表を参考に計算してみてください。
実践しよう!キャッシュコンバージョンサイクルの活用方法2つ
活用方法は「推移分析」と「他社比較」の2つがあります。
推移分析
事業年度ごとに仕入責務、棚卸資産、売上債権の推移分析をすることで、どこの数値に異常があるのかを発見することができます。
異常がある数値を分析することでどこを改善すればいいのかがはっきりします。
他社比較
キャッシュコンバージョンサイクルは、企業の財務諸表を見るだけで計算できるため、業界平均や競合他社との数値比較ができます。
比較対象がないと自社のキャッシュコンバージョンサイクルが長いのか短いのか基準が分かりませんよね。
他と比較することで基準が分かるので、自社が今どの位置にいるのか明確になって目標を立てやすくなります。
比較してみよう♪キャッシュコンバージョンサイクルの目安
キャッシュコンバージョンサイクルには、業界ごとの目安となる数値があります。
業界ごとに数値に違いがあるので、それを参考に自社の資金繰りがどの段階にあるかを把握してみてください。
画像出典元:ザイマニ
建設業の場合、2018年~2021年までの平均は70後半から80でしたが、2022年になって43.2と半分ほど減少しています。
以前より業界全体で資金繰りが良くなっているということなので、その原因を明確化することで今後の資金繰りをよくするヒントを得られるかもしれません。
また、平均よりも自社が高い場合、自社内に問題が隠れている可能性が高いので、数値分析をして原因を探るきっかけにもなります。

キャッシュコンバージョンサイクルを改善するには
キャッシュコンバージョンサイクルを改善するためには、どのような施策を行えばいいのでしょうか。
事例を用いながら改善方法を紹介します。
支払期間を長くする
仕入を行って支払うまでの期間が短いと、売上回収までの期間が長くなって資金繰りが悪くなってしまいます。
そこで、仕入代金の支払い期間を長くすることで、できるだけ長く資金を手元に置いておきキャッシュコンバージョンサイクルを短くするのです。
しかし、ただ仕入期間を長くするよう頼むのは会社の信用度を落としかねません。
仕入を大量に行う、長期契約を結ぶなど、取引先にメリットのある条件を提示して支払い期間の交渉を行いましょう。
また、自社内でできる施策もあります。
締め日が近づいてきたら仕入を減らすという方法です。
支払いというのは、基本的に「月末締めの翌月末支払い」が多いですよね。
月末に近づくにつれて仕入を絞っていき、ある程度仕入れたら次の仕入れは締め日の翌日以降に回すのです。
月末締め翌月末払いの場合、締め日以降の仕入れにすることで支払いを30日ずらすことができます。
仕入を1日ずらすだけで、資金を長く手元に残しておくことができるのです。
加えて、売上の請求締め日と支払い締め日が同日であった場合、売り上げたお金で支払いができるので支払いをするための資金調達が必要なくなるのです。
このように、ちょっとした知恵で資金繰りのしやすさが変わってきます。
売上の回収サイクルを短くする
商品を販売してから売り上げを回収するまでの期間を短くすることで、キャッシュコンバージョンサイクルを短くする方法です。
売上計上タイミングの徹底管理、支払い遅延が発生している企業への厳格な対応などが重要になってきます。
また、支払いの方法を前払いや即日払いにシフトする方法もあります。
例えば、サブスクリプションは登録した日が請求日となり、一カ月分または一年分の金額を前払いする制度です。
Amazonは、Amazonプライム・Amazonギフトカード・AWS利用料などの前払いサービスを利用して売上債権回転日数を短くし、CCCをマイナスに抑えているのです。
AmazonのCCCがマイナスになっている要因は、Amazonマーケットプレイスにあります。
Amazonマーケットプレイスは、個人でも法人でもものを出品・販売することができるサービスです。
仕組みとしては、購入者の支払い料金全額を一度Amazonが受け取り、手数料を差し引いた分の料金が2週間後に出品者へ入金されます。
この2週間とタイムラグがあることで、Amazonは無利息で運用資金を得ることができるのです。
マーケットプレイスの売り上げが増えれば増えるほど、手元にある資金が増えていくため、資金繰りが良くなっていくのです。
Amazonほどのサイクルを作るのは難しいですが、サブスクリプションを行える商材を取り扱うことで一定の料金回収ができるようになるので、取り入れることをおすすめします。
在庫を持つ期間を短くする
在庫を保有している期間を短くすることで、売上回収までの期間を短くすることができます。
そのためには、在庫管理の徹底で無駄な発注はしないこと、在庫管理システムなどを使った高精度の需要予測による発注・販売で売れ残りを出さないことが重要です。
ものによっては完全受注生産にして、無駄のない生産を行いましょう。
パソコンなど電子機器を取り扱うHP社では、在庫棋院コストを製品ごとに見える化し、押すと改善プロジェクトを立ち上げて改善施策を行って効果を上げました。
施策の内容は以下のものです。
- ・見込み生産から受注生産への切り替え
- ・補給型への切り替えで流通在庫を削減
- ・Supplier-Managed Inventory供給側に在庫管理を任せるようにし、加えて共通部品の割合を増やすことでPCコストを約1~2%削減
このように、在庫コストを削減するための施策を試行錯誤しながら見つけていくことが大事です。
売り上げを増やす
販売から売上の期間が長引いても、一度に多額のお金を回収できれば資金繰りもよくなります。
売上を上げるためにマーケティング施策を行い、ニーズに合った商品の開発・販売、販路の拡大、SNSなどを使った認知度の向上を目指しましょう。
CCCマイナスを目指そう!
キャッシュコンバージョンサイクルの見直しは、企業の経営改善にも繋がります。
業界平均を把握して自社の問題を早期発見、早期解決していきましょう!
他社の成功事例も参考にして、自社で取り入れられるものを実践していってください。
コメント