工事前に行われる「地鎮祭」。
昔は当たり前に行われていましたが、近年は行わない人も増えてきているようです。
しかし、地鎮祭は工事の安全を願う以外にも実施する意味があるものです。
地鎮祭とはどんなものなのか、流れや所要時間、用意するものなど、この機会に知っておきましょう。
地鎮祭とは
地鎮祭とは、建物の新築や土木工事の起工の際に、土地を守る神様に土地を使用する許しを請い、工事の安全と建物の繁栄を願う儀式のことです。
工事の着工前に、神職を招いて神様にお供え物をしたり祝詞を上げたりと、決められた流れがあります。
地鎮祭の開催を決めるのは施主ですが、実際に段取りを決めるのは建築会社であることが多いです。
地鎮祭の参加者は、施主、施主の家族、工事関係者(施工会社の担当者、現場監督、棟梁、設計者など)、神主です。
両親や親戚を呼ぶかどうかは施主の自由です。
絶対にやらなければいけないの?
地鎮祭は絶対にやらなければいけないわけではありません。
開催するかどうかは施主の判断に委ねられています。
「地鎮祭にあまり時間とお金をかけたくない…」という場合は、代わりになる簡易的な地鎮祭のやり方もあります。
地鎮祭の代わりになる!簡易的な方法
祈祷をしに行く
神職の方に来てもらうのではなく、自分たちが神社に足を運んでお祓いや祈祷をしてもらう方法です。
建築場所を伝え、工事の安全と家族繁栄、建物繁栄を祈祷してもらいましょう。
祈祷後は、一般的にお札や鎮め物、御砂などを授与されます。
お札は神棚などに大切に保管し、鎮め物は施工会社に渡して地中に埋めてもらいます。
清めの御砂は、敷地の四隅や家の周辺、ベランダや玄関に撒いて清めます。
セルフ地鎮祭を行う
神職や施工会社は呼ばずに、家族だけで簡単に地鎮祭を行う方法です。
洗米と清酒、粗塩などを用意し、土地の角地4カ所と土地の中心の合計5カ所にお米を巻きます。
南・西・北・東という順番で撒いていきましょう。
洗米を巻き終わったら、粗塩、清酒という順番で撒いてください。
最後に、土地の中心に余った洗米、粗塩、清酒を盛り、家族みんなで手を合わせて土地の神様への挨拶としてお祈りします。
上棟祭や竣工祭を行う
上棟祭とは、建物の骨組みが完成し、棟木を上げるタイミングで行う、工事の無事と建物の安全を祈願する儀式です。
竣工祭とは、建物が完成した後に工事の完了を感謝し家内安全を祈願する儀式です
地鎮祭の代わりにこれらを行うケースもあり、竣工祭の初穂料は2~5万円が相場です。
上棟祭は簡易的なもので10万円程度かかってしまうので、「儀式をやりたいけど費用も抑えたい」という場合は竣工祭がおすすめです。
地鎮祭をやるメリットは?
地鎮祭はお金も手間も時間もかかります。
しかし、開催するメリットがあるものなのです。どんなメリットがあるか知っていきましょう。
工事の安全と建物の永続を祈願できる
地鎮祭は、神様に挨拶をし、工事の安全と建物の永続を祈願する儀式です。
神職を呼んでしっかり行えるため、精神的に安心できます。
万が一工事中に事故やトラブルが発生した際、地鎮祭を行っていないとそれが原因ではないかと考え、不安になってしまいます。
もし地鎮祭をしなかったことを後悔してしまう場合は、工事完了後に竣工祭を行いましょう。
工事関係者との信頼関係を築ける
地鎮祭には、工事関係者を招待するため、顔合わせや挨拶の場になります。
どんな人が工事を行ってくれるのか知り、交流を持っておくことで、工事中に何かあった時に意思疎通がしやすくなります。
お互いに顔や印象が分かることで、工事に対する気持ちも高まり、より良い家づくりにつながるでしょう。
近隣住民と交流する機会を得られる
地鎮祭の後は、近隣住民にあいさつ回りを行います。
特に新しくその土地に引っ越してきた場合は、引っ越しの挨拶にもなるので近隣住民に良い印象を与えられます。
工事前に近隣住民と良好な関係を築いておくことで、工事中の騒音などでトラブルになることも少ないでしょう。

地鎮祭の流れ
では、地鎮祭の流れを見ていきましょう。
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➀手水:両手を洗い心身を清める
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②修祓(しゅばつ):裁断や参列者を祓い清める
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③降神の儀:祭壇に神様を迎える
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④献饌(けんせん)の儀:神様にお供え物を食していただく
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⑤祝詞奏上(のりとそうじょう):建物を造ることを神様へ報告し、工事の安全祈願の祝詞を唱える
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⑥四方祓(しほうはらい)の儀:土地の四隅に米・塩を撒いてお祓いする
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⑦地鎮の儀:砂山を設けて鍬入れを行い、鎮め物(のし紙など)を埋める
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⑧玉串拝礼(たまぐしはいれい):神前に玉串(榊の葉)を捧げる
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⑨撤饌(てっせん)の儀:お神酒などのお供え物を下げる
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⑩昇神の儀:神様をお送りする
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⑪神酒拝戴(しんしゅはいたい):安全を祈願して献杯する。音頭は神主さんが行う
地鎮祭は、このような流れで行われます。一般的に30分程度で終了するそうです。
唱和や礼、拍などは神主さんが声掛けを行ってくれます。
施主は、鍬入れと最後の挨拶を確認しておきましょう。
地鎮祭が無事終わった後は、粗品を持って近隣住民への挨拶回りを行います。
工事中の騒音やほこり、車両の出入りなどで迷惑をかけてしまう場合があるので、挨拶回りはしっかり行いましょう。
挨拶は、自分の家の両隣、裏の3軒、向かい3軒までは必ず行いましょう。
地鎮祭で用意するもの
地鎮祭で用意するものは、初穂料とお供え物、挨拶回り用の粗品です。
初穂料
神主さんへの謝礼になります。
相場については費用の項目で紹介します。
お供え物
お供え物は、次のものを用意します。
米 |
一合程度。洗米が必要なので、前日に洗って一晩乾かしたものを用意する。
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清酒 | 奉献種(ほうけんしゅ)と呼ばれ、一升瓶2本を包装紙で包み、のし紙に「奉献」または「奉献酒」と書く。 |
山の幸 | その時期の旬のものを用意する。果物にするのが一般的 |
海の幸 | その時期の旬のものを用意する。魚はもちろん、昆布やスルメも用意する。
魚は、頭としっぽがついたものにするのが一般的 |
野菜 | 人参、大根、キャベツ、トマト、キュウリなどの中から3種類以上用意する。 |
水 | 180~200グラム程度(一合)あればOK |
塩 | 200グラムほど用意する。お供え物としてだけでなく、地面を清める時にも使用する。 |
挨拶回り用の粗品
近隣住民に挨拶に行く時に持っていく粗品を用意しましょう。
日用品で使いやすい洗剤やトイレットペーパー、タオルなどもおすすめです。
お菓子なら、好き嫌いが分かれにくく長持ちする焼き菓子がおすすめです。
クッキーやマドレーヌなどがいいでしょう。
日取りや服装について
地鎮祭を行うにあたって、おすすめの日にちや服装を紹介します。
日取り
一般的に、大安、先勝、友引などの吉日を選ぶことが多いです。
大安であっても、十二直の三隣亡の日は避けた方がいいなどの慣例があります。
三隣亡とは、仏滅や大安などのように日の吉凶を表す暦注の一つで、土木建築関係の凶日とされている日のことです。
三隣亡の日に建築や引っ越しを行うと、自分を含む三軒隣まで災いが及ぶと言われています。
2025年7月の三隣亡の日は、12日と24日です。
年や月によって日にちが異なるので、事前に調べてから日にちを選びましょう。
加えて、できれば11時~13時までに行うのが理想です。
実際、地鎮祭は午前中に行われることが多いようです。
服装
服装に関して、特に決まりはありません。
清潔感がある格好であれば何でも大丈夫なようです。
男性はスーツ、女性はワンピースやオフィスカジュアルで行けば間違いありません。
地鎮祭では、立ち座りやお辞儀などの動作が多いため、動きやすいゆとりのあるものを身に付けましょう。
地鎮祭にかかる費用は?
地鎮祭の費用相場は、10~15万円です。
内訳は、初穂料が2~5万円、神主へのお車代が5000~1万円、建設業者に払う準備費用が1~5万円、お供え物代が約1万(買うものによる)です。
その他、粗品や直会(地鎮祭後にある食事会)の費用などがかかってきます。
儀式の規模や、直会の有無によっても金額は変動するので、目安として考えてください。
初穂料ののし紙の選び方
初穂料では、新札をのし紙にいれて用意します。
のし紙の表書きは「初穂料」または「玉串料」と書き、水引は紅白の蝶結びを選びましょう。
水引の上部に表書きを書き、下部に施主の名前をフルネームで書きます。
夫婦の場合は連名で書き、会社の場合は代表者名で準備します。
雨が降ってしまったら・・・
地鎮祭は、基本的に雨が降っても開催します。
「雨降って地固まる」ということわざがあるように、雨の日の地鎮祭は縁起がいいと言われているのです。
雨が土地を固め、豊穣と繁栄をもたらすとされています。
地鎮祭当日に雨が降ったら逆にラッキーです!
地鎮祭の実施はあくまで施主の判断で大丈夫
ここまで地鎮祭の話をしてきましたが、なかなかお金がかかる儀式です。
建物を建てるのはそれだけでお金がかかるので、少しでも出費を抑えたいという場合は、個人宅であれば簡易的な地鎮祭でも十分です。
あくまで地鎮祭の開催は施主が決めるものなので、無理のない範囲で考えてください。
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