建設業界でもDXやICTが言われるようになって数年経ちますが、その中で大きな存在であるICT建機について紹介していきたいと思います。
種類や導入するメリット、効果など伝えていくのでぜひ参考にしてください。
ICT建機とは
ICTはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術を意味します。
つまり、ICT建機は情報通信技術を搭載している建設機械のことです。
建機にIT技術を取り入れることで、より正確な施工が可能になったり生産性が向上したりします。
IT技術が進化している現代において、ICT建機を導入しないのは仕事の効率を上げる機会を無下にしているようなものなのです。
ICT施工との違い
ICT施工はICTと土木施工を組み合わせた言葉で、ICT建機を使った工事のことです。
建設現場の生産性向上や省人化、安全性の向上のためにはICT施工を積極的に行っていく必要があります。
ICTは、建設現場の環境をよくするために重要な要素なのです。
ICT施工はなぜ推進されている?
ICT施工は国土交通省によって推進されていますが、なぜ国がICT導入を勧める事態になっているのでしょうか。
それは、建設業の人手不足問題が原因です。
前提として日本全体で少子高齢化が進んでおり、2022年の出生率は約67万人と前年より約3万4000人も減少しています。
このように年々少子化が進行しており、労働人口が日本全体で減少傾向にあることが分かります。
そんな中、建設業の若者離れは他業界より顕著です。
ツクノビの情報によると、建設業界全体で55歳以上の就業者割合は約36%で、29歳以下の就業者は12%と半分以下しかいないことがわかります。
このように、建設業界は若手の人手不足が深刻で、今後も高齢化が進行すると考えられます。
そのような状況では生産性を向上させて省人化を図る必要があります。

ICT建機には2種類ある!
ICT建機には「3DMC」と「3DNG」の2種類があります。
3DMC
3DMC(3Dマシンコントロール)とは、建機をコントロールするシステムのことです。
車でいうと、半自動運転のようなものです。
3Dの設計データをICT建機に取り込み、MCスイッチを押しながらレバーを引くだけで作業装置の高さや傾きを自動操作してくれます。
適用可能な建機は、油圧ショベル・ブルドーザー・モーターグレーダーなどです。
3DMG
3DMG(3Dマシンガイダンス)とは、位置情報を把握して設計面との差を案内してくれるシステムのことです。
車で言うと、カーナビのようなものです。
人工衛星による位置計測をするGNSSなどが、建機の位置をリアルタイムで計測し位置情報を送ってくれます。
重機オペレーターは建機に搭載されたPCで位置情報を確認できるので、実際の位置と設計図とのずれを逐一把握しながら作業を進めることができます。
適用可能な建機は、油圧ショベル・ブルドーザーなどです。
ICT建機を使うメリット・デメリットは?
ICT建機のメリット・デメリットを知っていきましょう。
加えて3DMCと3DMGのメリットも紹介していきます。
ICT建機のメリット
生産性の向上
ICT建機を導入することで人の手で行う作業が減るため、無駄な動きをなくして作業効率を上げることができます。
機械の制御や測量など、今まで手作業で行っていた部分を機械に任せられることで、準備の手間や作業工程が少なくなるので生産性向上に繋がるのです。
省人化できる
今まで手作業でやっていた作業を自動化できるので、人がやる作業を減らすことができます。
それにより、人手を減らして作業を進めていくことが可能になります。
人手不足の建設業界にとっては大きなメリットですよね。
自動制御システムがあれば経験の少ない作業員でも安心して操縦できるので、若手育成もやりやすくなります。
品質を安定させられる
機械による自動制御や位置計測補助が受けられることで、常に品質を安定させることができます。
人の手によって作業を行っていると、やはり品質にバラつきが出てしまうのは仕方がないことです。
ICT機械を導入することで品質を担保することができれば、企業の信頼度を上げることにも繋がります。
オペレーターの負担を減らせる
ICT建機には建機の操縦をサポートしてくれるものがあるので、それを導入することでオペレーターの負担を減らすことができます。
また、ICT建機を使うことでオペレーターが乗り降りする必要がなくなるため、体力も温存できますし事故が起こるリスクも減らすことができます。
安全性の向上
上記でも述べた通り、事故のリスクを減らすことにも繋がります。
従来は必要だった丁張りの設置作業などが必要なくなり、機械の周りで作業する機会が減ることで事故のリスクを減らすことができます。
ICT建機のデメリット
導入費用が高額
建機自体も高いですが、ICTが入っていることでさらに高額になります。
また、システムはアップデートが繰り返されるため、継続的に費用がかかるのもネックです。
ICT建機導入の補助金が用意されているので、ぜひ積極的に活用していきましょう。
補助金については下記で紹介しています。
MCだとオペレーターの技術が向上しない
MC(マシンコントロール)だと、半自動操縦になるので細かい動きなどは機械が行ってくれます。
これにより、オペレーターの技術が向上しなくなってしまうことに加え、ベテランのオペレーターも技術が衰えてしまうリスクがあります。
頼りきりになると危険
ICT建機によって作業が楽になると、「機械に任せれば安心」という油断が生まれてしまいやすいです。
しかし、システムに絶対はなく、AIであってもまだまだ未完成な部分が多いです。
万が一計測がずれていたり、トラブルが起こって使えなくなったりした場合にお手上げ状態にならないように、重機の操縦技術はある程度持っておく必要があります。
車の自動操縦も車に全てを任せきるのは怖いですよね。
万が一を考えて常に先回りした行動をとりましょう。
3DMC
メリット
- データをインポートするだけなので簡単に使える
- 操作はスマホ感覚で行える
- 素早く作業できる
- 経験の浅いオペレーターでも操縦できる
- 丁張りの設置が不要になる
デメリット
- 導入費用が高額
- 3Dでの設計が必要
3DMGの場合
メリット
- データをインポートするだけなので簡単に使える
- 操作はスマホ感覚で行える
- MCと比べると安く導入できる
- オペレーターの腕が落ちない
- 丁張りの設置が不要になる
- 既存の建機に取り付けられる
デメリット
- オペレーターの技術によって完成品に差が出る
- 3Dでの設計が必要
ICT建機による実際の効果はどうなのか
ICT建機は導入することによるメリットが大きいことが分かったかと思いますが、実際の効果はどのくらいあるのか気になりますよね。
そこで、住友建機が行った実験を紹介します。
100㎡の平面の中央部を1.5mの深さまで掘削して法面を整形し、掘削面に幅2m、深さ0.3mの溝を切るという作業を従来機とICT建機で行うというものです。
オペレーターは同じ人物を使い、施工時間の違いを比べる実験のようです。
その結果、従来機では280分かかったものが、ICT建機を使うことで159分に短縮することができました。
何と43%もの時間短縮を実現したのです!
さらに、ICT建機だと丁張りの設置や検測の必要もなくなるので、従来は2人体制で行っていた作業もオペレーター1人でできるようになります。
これにより、人員も約67%削減することができたそうです。
別の実験で、国土交通省が出している実験結果も紹介します。
約20㎡法面整形における、従来機とICT建機の施工時間や精度の違いを比較した実験です。
施工時間に関して、従来機では34分でしたが、ICT建機では27分と7分の短縮ができました。
今回の実験では熟練オペレーターが行ったため、従来機でも短時間で施工ができたと考えられます。
ただし、上記でも述べた通りICT建機は丁張りの設置や建機から降りての状況確認が不要なため、その手間が短縮されて作業全体ではなんと52分も短縮できたようです。
また、大規模土木による作業日数の比較では、従来機で63日、ICT建機で52日と11日も短縮することができたそうです。
ICT建機の使用で作業工程が短縮され、かなりの作業効率アップに繋がっていることが分かります。
加えて、作業工数の比較では、従来機で一日99人必要だったところ、ICT建機では一日67人と32人も削減することができています!
ただし、従来の丁張り計算に相当する3D設計データの作成にかなりの時間がかかってしまったようです。
3D設計を内製化して作成の導線を作ることができれば、さらなる時間短縮が実現できるでしょう。
ICT建機を導入することで、時間短縮や人手不足を補うことに繋がっていくのです!
ICT建機導入の補助金について
ICT建機の導入、ICT施工には補助金が用意されています。
建機は高価なので、補助金を活用することで通常より安く導入することができるようになります。
国の制度なのでぜひ積極的に利用しましょう。
利用できる補助金制度を紹介していきます。
ICTシステム機器の導入は「ものづくり補助金」
ものづくり補助金(正式名称はものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業)とは、中小企業が取り組む革新的サービス開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金制度です。
設備投資と併せて専門家に依頼する費用も負担してくれるようです。
【対象】
- 従業員数や資本金が要件を満たしている中小企業
- ※組合や非営利活動法人、社会福祉法人も対象
【補助金額】
種類 | 概要 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
|
従業員数
5人以下:100~750万円 6~20人以下:100~1000万円 21人以上:100~1250万円 |
1/2、2/3 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 業況が厳しい中、賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
|
2/3 | |
デジタル枠 | DXに役立つ革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
|
2/3 | |
グリーン枠 | 温室効果ガスの削減に役立つ取組に応じ、革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 | 【エントリー類型】
5人以下:100~750万円 6~20人以下:100~1000万円 21人以上:100万円~1250万円 【スタンダード類型】 5人以下:750~1000万円 6~20人以下:1000~1500万円 21人以下:1250~2000万円 【アドバンス類型】 5人以下:1000~2000万円 6~20万円:1500~3000万円 21人以上:2000~4000万円
|
2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 海外事業の拡大・強化等を目的とした製品サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な整備・システム投資等を支援 | 100~3000万円 | 1/2、2/3 |
ICT建機・ドローン・測定工具・デジタル複合機などの経費を負担してくれるので、要件に当てはまる企業はぜひ活用してください。
16次締め切りでの公募期間
- 公募開始:令和5年7月28日 17時~
- 申請受付:令和5年8月18日 17時~
- 応募締め切り:令和5年11月7日 17時まで
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
データ作成ソフトなどは「IT導入補助金」
IT導入補助金とは、中小企業・個人事業主がITツールを導入したい時に活用できる補助金制度です。
決済関連のソフトやクラウドサービスを導入する際におすすめです。
【対象】
資本金や従業員数の要件に当てはまる中小企業・個人事業主
【補助金額】
種類 | 概要 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 生産性向上を目的としてITツールを導入する際の支援 | 【A類型】
5~150万円未満 【B類型】 150~450万円以下 |
1/2 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃のリスクを踏まえ、サイバーセキュリティ対策の強化を支援 | 5~100万円 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入類型 | インボイス制度など、企業取引間のデジタル化を支援 | ~350万円 | 【会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上】
3/4以内 【会計・受発注・決済・ECのうち2 機能以上】 2/3以内 |
ICT建機の低利融資なら「環境・エネルギー対策資金」
環境対策型の建設機械を購入する際に必要な資金の融資を限度額まで受けられる制度です。
油圧ショベルやブルドーザーなどが対象なので、「ICT建機を導入したいけど手元にまとまったお金がない」という方におすすめです。
ただし、補助金ではなく融資なので、あとで返す必要があることは覚えておきましょう。
【対象】
資本金3億円以下または従業員300人以下の中小企業、個人事業主
【貸付額】
中小企業で最大7億2000万円、国民生活事業で最大7200万円
【貸付期間】
20年以内
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/15_kankyoutaisaku_t.html
レンタルもある!?
「ICT建機を導入したいけど、資金が足りない」
「導入したらどうなるのかシミュレーションしたい」
そんな悩みや希望がある建設業者さんも多いのではないでしょうか。
その場合はICT建機のレンタルがおすすめです。
レンタルサービスを行っている会社はたくさんあるので、種類や金額を比較してお得にレンタルしてみてください。
まとめ
今回はICT建機の紹介をしました。
内容を簡単にまとめると、
- ICT建機は情報通信技術を取り入れた建設機械のこと
- 人手不足を補うため、国でICT建機やi-Constructionが推進されている
- ICT建機は「3DMC」と「3DNG」の2種類がある
- 生産性向上の効果が高いので、補助金を活用してお得に導入すべし
このようになります。
ICT建機を導入して作業効率を高めている建設業界は増えているので、現場の環境をよくするためにもICT建機を導入しましょう!
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