近年、建設業では倒産が相次いでいるようです。
その理由や倒産リスクをカバーしてくれる保険について解説していこうと思います。
建設業の倒産が急増している
帝国データバンクが2022年に行った調査によると、建設業の倒産率は去年よりも19%も上昇し、3年ぶりに倒産が増加したそうです。
画像出典元:ITメディアビジネス
2022年は2021年から続いているウッドショックやウクライナ情勢などで建設資材の品薄が続き、それが原因で資材の価格高騰が起こり、工事原価が上昇しました。
また、人手不足も深刻化しており、資格を持った人材が離職してしまうことで工事が思ったように進まないといった事態にも陥ってしまっています。
資材が手に入らない、工事にかかる費用が高い、人手が足りないといった要因から工期が長期化し、それも原因の一つとなって建設業での倒産が相次いでいるのです。
倒産リスクが高まっている建設業では、いつ取引先が倒産するか分かりません。
取引先が倒産してしまった場合、もらえるはずの売上が全てなくなってしまう恐れもあります。
もしその取引がかなり大規模なものだった場合、自社の損害は計り知れませんよね。
そのようなリスクを回避するために「取引信用保険」が存在しています。
倒産リスクに備えられる「取引信用保険」とは?
取引信用保険とは、取引先が倒産してしまい売掛金が回収できなかった際、その損害の一部を補償してくれる保険です。
倒産にならない場合でも、夜逃げや私的整理の段階で補償対象となるので安心できます。
ファクタリングとの違い
取引信用保険と似た仕組みに「ファクタリング」があります。
ファクタリングには買取型と保証型があり、取引信用保険と似ているのは保証型の方です。
3つの違いを表にまとめたのでご覧ください。
買取型ファクタリング | 保証型ファクタリング | 取引信用保険 | |
内容 | 取引先からの支払いを待たずに現金を受け取れる | 倒産などで回収不可能と判断された時に保証金を受け取る | 倒産などで回収不可能と判断された時に保証金を受け取る |
対象債権 | 法人の売掛金 | 法人の売掛金 | 売掛金/各種手形 |
取引先の範囲 | 自由に選択 | 自由に選択 | 規模によっては選べない |
手数料 | 2社間:10~30% | 1~8% | 1~3% |
取引可能な取引先の形態 | 主に法人 | 主に法人 | 法人・個人事業主 |
このように、保証型ファクタリングと取引信用保険は似ていますが、手数料が安いことや保険を掛けられる取引先対象が広いことから、取引信用保険の方がおすすめできます。
保険料の支払いが発生するケース
取引信用保険はどのような場合に支払いが発生するのでしょうか。
支払いが発生するのは以下の場合です。
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破産手続の開始、民事再生手続の開始、会社更生手続の開始、特別清算の開始等の申立があった場合
取引金融機関または手形交換所の取引停止処分を受けた場合債務者の財産につき強制換価手続が開始された場合
仮差押命令が発令された場合または保全差押としての通知があった場合債務者の相続人の全員が相続の限定承認もしくは相続の放棄をした場合または財産分離の請求があった場合
債務者がその財産につき管理人を置かないままその住所または居所を去った後1年間を経過してもその債務者の生存が確かめられない場合
取引信用保険のメリット・デメリット
取引信用保険にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
【メリット】
資金繰りの悪化を防ぐ
取引信用保険に加入していれば、万が一取引先から売掛金を回収できなくても貸し倒れ損失を防ぐことができます。
そのため、未回収で資金繰りが不安定になることがなく、安心して取引できます。
連鎖倒産を防ぐ
取引先から回収した売掛金でその他の支払いを済ませようとしていた場合、取引先が倒産してしまうとそれらの支払いも滞ってしまい連鎖倒産に追い込まれるリスクもあります。
取引信用保険に入っていれば売掛金の一部回収ができるので、連鎖倒産のリスクを回避できます。
取引先の与信管理ができる
一企業が取引先の信用状況を常に把握するのはかなりハードルが高く、専門の調査機関を利用したところで限界があります。
しかし、取引信用保険に申し込むと取引先の審査が行われるので、自社でも与信管理を行うことで二重で信用度を確認できます。
取引先ごとに予算限度額の設定を行い、取引先の状況に問題が発生した場合は与信限度額の減額・撤回を行ってくれるので安心です。
他取引先から信用を得られる
取引信用保険に加入することで貸し倒れのリスクがなくなるため、今取引をしている企業、これから取引をする企業から信頼を得ることができます。
また、金融機関からの信頼度も高まるため、資金調達もスムーズになります。
従業員の負担を軽減できる
取引先の与信管理、債権の回収、売掛金の催促、資金繰りなど、貸し倒れが起きないよう従業員がやるべき業務はたくさんあります。
取引信用保険に加入すれば、これらの負担が軽減するため、従業員満足度も向上します。
取引拡大のチャンスが増える
新たに取引を始める際、取引先が本当に信用できるかをまず見極める必要があるため、新しいビジネスに関してもかなり慎重になります。
そうなるとなかなか取引が進まなかったり、ビジネスチャンスを逃したりする恐れもあります。
与信管理が徹底できて貸し倒れのリスクもなくなれば、新しいことに挑戦しやすくなります。
事業拡大のチャンスをつかみやすくなるのです。
【デメリット】
100%の補償ではない
取引信用保険の補償割合は90~95%です。
決して少ないわけではありませんが、100%補償されるわけではないことを覚えておきましょう。
与信審査を受ける必要がある
取引信用保険に加入するためには、保険会社による与信審査を受ける必要があります。
審査結果によっては補償額が少なくなる、保険料が高くなるといった場合もあるそうです。
また、倒産リスクの高い会社だと判断された場合、補償対象外になる恐れもあることを知っておいてください。
取引先を選べない可能性がある
基本的に全取引先が補償対象となるため、特定の取引先のみを補償対象にすることはできません。
「売上高の多い上位10社」「債権残高の〇位~〇位」などの大まかな範囲を選択して補償対象にすることはできます。

保険加入の要件は?
保険に加入する際の要件は特にないようです。
ただし、加入する際に保険会社による与信審査があるため、その審査を通過できなかったら保険に加入できないので予め把握しておいてください。
保険料について
上記のファクタリングとの比較表でお伝えしたとおり、保険会社が設定する支払限度額の1~3%が保険料の相場です。
例えば、支払い限度額が1000万円で保険料率が2%だった場合、1000万円×2%=20万円で年間の保険料は20万円になります。
保険料率は保険会社や取引件数、取引先の信用度などで変動するので、常に変わることがあると覚えておきましょう。
代表3社の保険内容を比較してみた
取引信用保険を提供している保険会社はたくさんあるので、どの保険会社を選べばいいのか悩みますよね。
そこで、代表的な3社の保険内容を比較していこうと思います!
ぜひ参考にしてください。
損保ジャパン
損保ジャパンが出している取引信用保険は「あんしん取引・マスター」というものです。
新規取引も大口取引も補償対象であり、取引数の制限もありません。
支払われる保険金は設定した支払限度額まで100%補償してくれます。
三井住友海上
中小企業を中心に人気のある三井住友海上の取引信用保険。
保険料は、「損害を受けた金額×縮小支払割合90%」または「設定した支払限度額」のいずれか小さい金額の方を元に支払われます。
なお、輸出取引に対する未回収債権に対しても適用されます。
東京海上日動
東京海上日動の取引信用保険に加入する場合、全国中小企業団体中央会または都道府県中小企業団体中央会の会員である団体/協同組合に加入する必要があります。
支払われる保険料は、「未回収債権額―反対債務や回収金×縮小率95%」で割り出されます。
なお、三井住友海上と同様に輸出取引に関する未回収債権に対しても適用されます。
このように、保険会社によって支払われる金額や年間の保険料は異なるので、各企業を比較して一番お得なところで契約するようにしましょう。
保険に入って倒産リスクに備えよう!
経済が不安定な今の時代、どんな企業でも倒産リスクを抱えています。
取引先の倒産で不利益を被らないためにも、他の取引先に迷惑をかけないためにも、貸し倒れリスクを最小限に抑えてくれる取引信用保険に加入しておくことをおすすめします。
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