建設業では、実際に建物を造る人だけでなく事務のような裏でサポートする人の存在も重要です。
そこで今回は、建設業事務の仕事ややりがい、きついと言われる理由や向いている人など、まんべんなく紹介していこうと思います。
建設業事務の仕事内容
建設業事務の仕事は、基本的には他業種の事務とあまり変わりません。
- 電話/メール対応
- 来客対応
- お茶出し
- 事務用具(コピー用紙・文房具など)の補充
- 会議準備(資料作成/後片付け)
- 勤怠管理
- 伝票作成
- 請求書管理
- 決算処理
- 帳簿転記
などです。
ただし、他の事務よりも経理を担当する比重が高く、勘定項目も「完成工事高」「完成工事未収金」「完成工事原価」など、建設業特有の項目があります。
また、安全書類や建設業許可の更新申請など提出書類があるので、事務の方がその提出を任されている場合は期限内にまとめて提出する必要があります。
建設業特有のツールや書類はあるものの、基本的な業務は普通の事務と同じです。
建設事務には種類がある
建設事務は、
- 〇総務
〇経理
〇営業事務
〇現場事務
の4種類があります。
総務は事務仕事に加えて物品の管理や保険管理、場合によっては人事業務も行うようです。
経理は会計処理など経理の仕事がメインとなってくるでしょう。
この2つは、「会社全体の事務作業を行うイメージ」です。
総務は細かい仕事が多く、マルチタスクをこなしていけないと残業をする羽目になります。
経理はお金が関わる仕事が多いので、計算・入力ミスがあると大きなトラブルに繋がりかねないので責任感とストレス耐性が必要になります。
一方、営業事務は事務仕事に加えて営業のサポートや資料作成などを行います。
現場事務は、契約書類や進捗書類の管理、経費管理、資料作り、お弁当の注文配膳などのようです。
こちらの2つは、「社内の人に関するサポートを行うイメージ」です。
営業事務や現場事務は現場の動きに合わせて季節で仕事量が異なる場合があるので、残業しないと作業が終わらない時期と暇を持て余す時期があるようです。
時期による仕事量の変化が激しいので、そこを理解して働く必要があります。
同じ事務でも任される仕事が変わってくるので、応募する際は仕事内容をしっかり確認しましょう。
やりがいはどんなところにある?
では、建設事務のやりがい、メリットをご紹介します。
大きなプロジェクトを支えられる
建設業では、大きなプロジェクトに関われるチャンスがあります。
企業で大規模工事などに着手するようなことがあれば、建設事務もそのサポートを行います。
プロジェクトが進行して建物ができていく様子を間近で感じることができるので、職人さんと一緒に達成感を得ることができるでしょう。
CADのスキルを身に付けられる
建設事務では、CADのスキルを身に付けられる機会もあります。
自分から学ぶ姿勢を見せていけば、一般事務だけでなくそのような技術面でのスキルを延ばすこともできるという点で、他業界よりも幅広くチャレンジできる環境であると言えるでしょう。
事務スキルが全体的に身に付く
建設事務では、電話対応や来客対応、備品の補充などの一般的な事務作業に加えて経理や書類作成などの業務も行います。
他の事務より多くの作業をこなす力が身に付くので、他の業界でも役立つ事務スキルを身に付けることができるのです。
職人を支える仕事ができる
建設業は、建物という私たちの生活に欠かせないものを一から造りあげる仕事です。
その仕事を近い場所から支えることができる仕事なので、建物や建設業に興味がある方にとっては楽しく働けるではないでしょうか。
また、職人が快適に働けるように、事務仕事をこなして負担を減らすという点でもやりがいを感じられるでしょう。
資格は必要か
建設事務に就職するために必須の資格はありません。
しかし、仕事をする上で持っていると役立つ資格はいくつかあるので、紹介したいと思います。
MOS(Microsoft Office Specialist)
Excel・Word・PowerPointなどのMicrosoft Office製品のスキルを証明できるスキルです。
Microsoft Officeは事務仕事で使うことが多いと思うので、業務にダイレクトに生かすことができます。
受験資格も特にないので、誰でも受けることができます。
合格率も高いので、受験ハードルが低く独学でも合格することができるでしょう。
【試験レベル】
一般レベル:基本的な機能の理解度を確認
上級レベル(エキスパート):より高度な機能の理解度を確認
【受験方法】
全国一斉試験(オンライン):毎月1~2回
随時試験(最寄りの試験会場):各試験会場が設定した日程
のいずれか
【受験資格】
なし
【料金】
1科目10,780円~12,980円
【合格率】
初級は80%、上級は60%
建設業経理検定
建設業の経理に関する知識と処理スキルを測るための試験です。
1級~4級までのレベルがあり、段階的に資格を取得できるようになっています。
試験に合格すると建設業経理のスキルがあることを証明でき、2級以上に合格できれば経理のスペシャリストとして活躍することもできます。
また、資格を得ることで資格手当をもらえる会社もあるので、「経理として給料を上げていきたい」という方に特におすすめです。
【試験レベル】
1級:建設業原価計算・財務諸表・財務分析の3科目
2級:建設業の簿記・原価計算および会社会計
3級:建設業の簿記・原価計算
4級:簿記の仕組み
【受験方法】
申し込みをして、最寄りの試験会場(47地区にある会場)で受験
【受験資格】
なし
【料金】
1級:1科目8,120円、3科目同時で14,720円
2級:7,120円
3級:5,820円
4級:4,720円
【合格率】(令和4年9月)
1級:原価計算15.2% 財務諸表21.2% 財務分析44.5%
2級:33.8%
3級:58.3%
4級:77.8%
宅地建物取引士
人気の国家資格。
不動産の専門家を示す資格で、「重要事項の説明」「35条書面への記名」「37条書面への記名」という独占業務を行うことができます。
不動産取引において必要な説明ができるので、不動産業では資格取得が推奨されています。
建設業でも自ら建てた建物を自社で売るところもあるので、そういう会社では宅建の資格を持っていると重宝されます。
宅建は不動産・建設業・金融・小売業などさまざまな業界で利用できるので、そのような業界で働きたい方は取ることをおすすめします。
【受験方法】
申し込みをして送られてくる試験会場通知にある会場で試験を受ける
【受験資格】
なし
【料金】
8,200円
【合格率】
過去10年の合格率は15~18%
令和4年度の合格率は17%
日商簿記検定
簿記のスキルを測るための検定試験です。
簿記検定資格を取得すると、経理関連書類の読み取り・原価計算などの経理業務などのスキルがあることが証明されるため、経理の仕事をよりスムーズに行うことができます。
建設業では決算処理や書類を扱う機会が多いため、大いに役立つ資格と言えるでしょう。
1級はかなり難関ですが、もし取ることができれば高度な簿記スキルを身に付けていることの証明になり、いろいろな職場で活躍できるでしょう。
また、税理士試験の受験資格を得られるため、さらなる高みを目指すことができます。
【試験レベル】
1級:極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記などの知識の習得を確認
2級:高度な商業簿記・工業簿記の習得、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなどのスキルを確認
3級:基本的な商業簿記を習得し、経理書類の適切な処理を行えるスキルを確認
簿記初級:簿記の基本用語や複式簿記の仕組みを理解し実務に落とし込めるスキルを確認
原価計算初級:原価計算の基本用語や関係性を理解・分析し実務に落とし込めるスキルを確認
【受験方法】
申し込みを行い、試験会場で受験
2級と3級のみネット試験あり
年3回
【受験資格】
なし
【料金】
1級:7,850円
2級:4,730円
3級:2,850円
簿記初級/原価計算初級:2,200円
【合格率】(令和4年6月)
1級:10.1%
2級:26.9%
3級:45.8%
(令和3年4月初め~令和4年3月末)
簿記初級:64.2%
原価計算初級:89.5%
CAD利用技術者試験
CADの試験で一番有名なもので、CADの知識を持ち、CADを使った作図ができることを証明できる試験です。
事務仕事だけでなくCADを使った仕事やCADオペレーターを目指している方におすすめの資格です。
2次元CADと3次元CADの試験がそれぞれ分かれているので、まずは2次元CADの試験を受けて、合格後に3次元を受けると良いでしょう。
3次元CADを扱っている企業はまだ少ないものの、今後必要になってくる技術なのでとることをおすすめします。
2次元CADの場合
【試験レベル】
1級:CADを利用した実務経験、就学経験がある方向けの試験
実技と筆記があり、機械製図・建築製図・図面の知識の確認
2級:ある程度のCAD知識とシステム運用、データ管理スキルの確認
基礎:これから本格的に学習する人向けで、CADや製図の基礎知識の確認
【受験方法】
1級・2級:申し込み後、試験会場で受験
基礎:申し込み後、ネットで受験
【受験資格】
1級:2級または1級の有資格者
2級・基礎:なし
【料金】
1級:16,500円
2級:6,050円
基礎:4,400円
【合格率】(2021年)
1級:59%
2級:50.2%
基礎:82%
3次元CAD
【試験レベル】
1級:3次元CADシステムの操作、3次元設計の補助業務、モデリング能力があることを確認
準1級:3次元CADの知識と基礎的な操作、2次元パーツからのモデリングスキルを確認
2級:これから本格的に学習する人向けで、3次元CADの基礎知識やCADデータ管理、機能やモデリング手法など知識の確認
【受験方法】
申し込み後、試験会場で受験
【受験資格】
1級:2級または準1級の有資格者
準1級:2級の有資格者
2級:なし
【料金】
1級:16,500円
2級:11,000円
基礎:7,700円
【合格率】(2021年)
1級:31.6%
準1級:54.6%
2級:44.6%
給料について
建設業事務の平均年収は420万円だそうです。
しかし、資格やCADが扱えるようになると給料はもっと高くなる可能性はあります。
資格を取得して昇給を目指しましょう。
建設業事務の1日の流れ
建設事務の仕事がもっとイメージしやすくなるように、1日の流れを簡単に説明します。
流れは会社によって変わるので、参考程度に確認してください。
-
9:00~ 朝礼
9:15~ スケジュール確認と来客確認、電話対応
10:00~ 電話対応・来客対応・事務処理・書類の作成/確認・お弁当注文など12:00~ お昼休憩
13:00~ 事務作業・銀行業務・請求書など書類関連の処理
14:30~ 電話対応・来客対応・事務処理・書類の作成/管理
17:00~ 締め作業、終礼
17:30~ 退勤
大まかではありますが、このような流れで仕事が進んでいきます。
建設業事務はきつい?その理由
建設事務がきついと言われてしまうのはなぜなのでしょうか。
きついと言われる理由はいくつかあります。
- 男社会
- アナログ体制が根強い
- 小さな会社だとやることが多い
- 金額が大きいため責任が重い
- 事務所が清潔でない場合がある
- 男尊女卑がある会社もある
1つずつ見ていきましょう。
男社会
建設業は男性の割合が圧倒的に多いので、上下関係が厳しかったり職人気質の無口な方が多かったりします。
そのような男性が苦手な場合は、その環境に慣れるまでは精神的ストレスを抱える可能性もあります。
しかし、女性が少ない分、優しくしてくれる方も多いかと思うので、そこまで身構えなくてもいいと思います。
アナログ体制が根強い
中小規模の建設業では、まだまだアナログ体制が一般的だと思います。
手動で行う作業も多く、一つの作業に時間がかかるため業務がうまく捗らないこともあるでしょう。
Excelを使った集計作業なども多いと思うので、MOSの資格を取ることをおすすめします。
それか、管理ツールを導入するように社長にお願いするという手もあります。
小さな会社の場合やることが多い
中小規模の会社で人が少ないと、その分回ってくる仕事量が多くなります。
事務仕事だけでなく経理や書類作成、場合によってはCADの操作などスキルのいる仕事をお願いされる可能性があり、常にやることが多いです。
マルチタスクになるので、勤務時間内に仕事が終わらない可能性もあります。
しかし、仕事を通してさまざまなスキルを磨いていきたい人であれば、このような裁量の大きい会社は向いているでしょう。
金額が大きいため責任が重い
建設業では建物という高額なものを造り出すため、動く金額も大きいです。
金額が大きい分、処理業務を行う際にミスをしないよう慎重になる必要があります。
勘定処理に関しては責任の大きな仕事です。
事務所が清潔でない場合がある
建設業は男性が多いため、清潔感をあまり気にしない方が多いです。
作業をしていると服も汚れてしまうので、いちいち気にいていても仕方ないというのもあるでしょう。
そのため、トイレや事務所内がオシャレで綺麗なことはあまりないです。
事務所もプレハブが多いため、「オシャレで洗練されたオフィスで働きたい!」という方には向かないでしょう。
男尊女卑がある会社もある
建設業は高齢の男性が多いため、「お茶くみは男性がやるべき」というような固定観念を持っている人も少なくありません。
そのため、男性でもできるような仕事を押し付けられて、仕事が増える可能性があります。
セクハラが横行している会社も、少なくはなっていますがまだあるはずなので、もし精神的につらさを感じるようなら我慢せずに転職を考えてください。
どんな人に向いているのか
では、建設業事務はどんな人が向いているのでしょうか。
- 〇建設業に興味がある
〇数字に強い
〇事務作業が好き
〇女性より男性が多い方が気楽
〇コミュニケーション能力が高い
〇ものづくりに興味がある
〇明るくて前向き
〇自分から行動していける
〇マルチタスクが得意
〇細かな作業が得意
このような特徴を持った人は建設事務に向いています。
自分がどのくらい当てはまっているか確認してみてください。
女性が多い?
結論から言うと、女性が多いようです。
2021年総務省の労働力調査によると、建設業従事者の中で全職種に占める女性の割合は17.1%と、とても低いです。
しかし、その中で建設事務を務める女性の割合は74.4%と圧倒的に多いです。
建設業は全体的に力仕事が多く男性の割合が多いことから、力の必要ない事務職は女性に任せている会社が多いのではないでしょうか。
建設業事務の将来性
人々の生活や社会の発展に欠かせない建物を造っているため、業界としては需要がなくなることはないでしょう。
建設事務が行う単純作業の部分はAIや機械に代わられる可能性はありますが、事務として働きながらCADや施工管理などのスキルを身に付けることで、別の職種に就くこともできます。
事務だけでは将来性があるとは言えませんが、まだまだアナログな部分が残っている建設業において、すぐになくなる仕事ではないでしょう。
しかし、資格を取得したりスキルを磨いたりしていかなければ職をなくす可能性があることは認識しておきましょう。
まとめ
今回は、建設事務の仕事内容ややりがい、将来性などさまざまな特徴を紹介しました。
今回の内容を簡単にまとめると、
-
-
- 建設事務の仕事は、電話対応・お茶出し・備品補充など一般事務とほぼ同じ
- 経理の部分で特殊なルールも存在する
- 職人さんのサポートや大きなプロジェクトに携われるなどのやりがいがある
- 男社会、アナログなどのきつい面もある
- 必須資格はないが、取っておくと便利な資格はいくつかある
-
このようになります。
今から建設事務を目指している人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
資格を取ることでやれることも増えて自信ももてるようになるため、建設事務をしながらぜひ勉強してみてくださいね♪
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