建設業関連で「ゼネコン」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
しかし、ゼネコンがどういったものでどういった役割があるのかなどを知っている人は業界の方以外では少ないと思います。
今回は、ゼネコンを紹介していきたいと思います。
ゼネコンとは
ゼネコンは「ゼネラル・コントラクター」の略で、総合建築企業という意味です。
ゼネラル・コントラクターを日本語で言うと、ゼネラルが「全体的な」、コントラクターが「請負人・土建業者」という意味を持っています。
建物を建てる際に重要な「設計」「施工管理」「研究」の3つ全てを自社で行っている企業のことで、マンションやビル、公共施設、商業施設などの大型建築にも携わっています。
ゼネコンは、元請業者として工事を受注し、専門工事を行う建設業者に発注します。
請け負った工事全体を管理するのが主な仕事となります。
他との違い
【ハウスメーカーとの違い】
ゼネコンとハウスメーカーの違いは、請け負う建築物の種類です。
ハウスメーカーは主に個人住宅の工事を請け負いますが、ゼネコンは大型建築の工事を請け負います。
また、ハウスメーカーの場合はある程度規格の決まった住宅を建てて個人に販売します。
【工務店との違い】
ゼネコンは大型施設などを請け負いますが、工務店は地域に根付いて住宅を建てたい人と話し合い、家を建てます。
請け負う工事の規模も違いますが、存在の身近さにも差があるのです。
【デベロッパーとの違い】
デベロッパーは、新築マンションやリゾート開発などの都市開発を手掛ける不動産会社のことです。
企画・開発を主な業務としており、ゼネコンとは異なる仕事をしています。
サブコンとは
ゼネコンとセットにされるのが「サブコン」です。
ゼネコンとの違いや関係性が気になりますよね。
簡単にいうと、ゼネコンが受注した工事の専門的分野を部分的に請け負う会社のことをサブコンと言います。
サブコンの主な業務は電気工事・衛生設備工事・空調設備工事などで、特殊工事の協力会社です。
ゼネコンは3つに分類できる
スーパーゼネコン
単独の売り上げが1兆円を超える、完成工事高上位5位の企業を指します。
大林組・清水建設・鹿島建設・大成建設・竹中工務店が現在の大手5社となっています。
平均年収は1027万円で、20代は400万円以上、30代は800万円以上となっています。
準大手ゼネコン
スーパーゼネコンに次いで売り上げが大きく、売上高が3000億円以上の企業を「準大手ゼネコン」、売上高が4000億円以上の企業を「大手ゼネコン」としているようです。
戸田建設・三井住友建設・西松建設などが準大手ゼネコンに当てはまります。
平均年収は864万円です。
中堅ゼネコン
売上高が1500億円以上の3000億円未満の企業を指します。
スーパーゼネコンや準大手ゼネコンはほとんど上場していますが、中堅ゼネコンは非上場の企業も含まれています。
しかし、売上高が15000億円以上もあるのでかなり大きく成功している企業と言えます。
平均年収は837万円です。
ゼネコンの役割
ゼネコンはどのような仕事を担っているのでしょうか。
見ていきましょう。
設計
建物の図面を書いたり模型を作成します。
設計には、外観と内装のデザインをする「意匠設計」、耐震性などを考えて柱や骨組みを設計する「構造設計」、水道・空調・電気など建物として機能するための設備を考える「設備設計」があります。
施工管理
ゼネコンの主な仕事が施工管理です。
従業員が事故にあわないよう現場を管理する「安全管理」だけでなく、計画書などの書類を管理する「工程管理」、予算内で工事を行うための「原価管理」、設計図や指示書通りに工事が進められているか確認する「品質管理」があります。
ゼネコンで請け負う工事は規模が大きいため、関わる従業員の人数多く、設計図も複雑です。
大規模工事でトラブルなくスムーズに作業を進めるには、管理がとても重要なのです。
営業
民間企業や官公庁、公共団体などに営業を行います。
仕事の取り方は、官公庁・公共団体の場合は入札式、民間企業の場合は依頼を受けるという形で仕事を受注します。
得意先に訪問し、建設提案をする場合もあります。
設備
空調・電気・エレベーターなどの設備が設計図や計画書通りに施工されているか確認し、問題なく利用できるように管理します。
研究開発
コストを抑えた建築物を建てるために、新しい技術開発を行っています。
新しい資材、建築工法の開発など、建設現場の効率を上げるものやコストパフォーマンスの高いものを生み出すために日々研究が行われているのです。
独自の技術を生み出すために研究開発に力を入れている企業は多いです。
規模が大きい分他の建設会社や工務店ではできないような部分まで業務を行っているのです。
ゼネコンで働くメリット
大きなプロジェクトに携われる
一番のメリットは、公共施設や複合施設などの大型施設の建設に携われることでしょう。
数千人が関わる大規模プロジェクトを動かすことで、通常はできない経験を積むことができます。
複数の協力会社に指示を出し管理を行う経験により、ディレクション能力やマネジメント力を高めてくれるでしょう。
収入が多い
ゼネコンは大規模工事を受注しているため報酬が大きく、そこで働く従業員の給料も高いです。
企業規模が大きいこともあり安定性は抜群です。
仕事の量や責任は大きいですが、それに見合った収入を得ることができます。
労働環境がよくなってきている
建設業は長時間労働が問題視されていましたが、働き方改革の促進や長時間労働の上限規制により労働環境が少しずつ改善されてきています。
特にゼネコンは従業員が多いこともあり、他企業よりも福利厚生が充実しているところが多いです。
経験値が磨かれる
ゼネコンは総合建設業として大規模なプロジェクトに携わることができ、中小企業では経験できないマネジメントができます。
建設の技術だけでなく、協力会社をまとめるマネジメント力や金額にあった施工を行う原価管理により金銭的な調整など、経営に関する知識も身につけることができます。
建設の流れ
ゼネコンでは、どのような流れで工事を受注し施工していくのでしょうか。
流れを簡単に見ていきましょう。
- 【公共工事の場合】
- ①事業者登録を行う
- ➁入札案件を探す
- ③入札説明会に参加する
- ④必要書類を準備しておく
- ⑤入札価格を決める
- ⑥落札者が決定する
- ⑦契約する
【民間工事の場合】
- ①不動産デベロッパーが土地を見つける
- ➁不動産デベロッパーがその土地で建てることができる建物の簡易的設計図をゼネコンや設③計事務所に依頼
- ④設計図から建物の規模と売上を把握し、収支が合いそうであればゼネコンに見積もり依頼をする
- ⑤ゼネコンが簡易的な見積もりを提出
- ⑥価格交渉をする
- ⑦不動産デベロッパーが経費と売上を計算し、土地所有者の希望と合えば土地を取得する
- ⑧施工開始
ゼネコンが工事を受注する流れはおおまかにこのようになっています。
落札するために入札価格を考えたり、デベロッパーとの価格交渉をしたりと、ただ受注するわけではなく交渉力や競合の考えを読む力が必要になります。
ゼネコンで働くのに必要となる資格
ゼネコンで働くために必要な資格はありませんが、持っていると役立つ資格はあります。
資格を持っていれば活躍できる場も増えるので、仕事の幅を広げたい方は今から紹介する資格を取得するように動き出しましょう。
一級建築士
有名な資格なので知っている人は多いと思いますが、建物の設計や施工監理、クライアントや現場監督などとのやり取りを行う一級建築士になるための資格。
合格率は10%程度と低く、難易度がかなり高いことがわかります。
一級施工管理技士
建築工事の施工計画作成、工程管理・安全管理・品質管理など工事全体の管理・監督業務を行うための資格。
管理できる工事の規模に制限がないため、大規模な工事の管理・監督をすることができます。
一級施工管理技士は主任技術者または監理技術者にもなれるので、仕事の幅を広げて収入を上げることができます。
合格率は40%前後となります。
一級建築士よりは合格率は高いですが、決して簡単な試験ではありません。
建築設備士
建築設備全般の知識・技術を持ち、建築士に対して建築設備の設計・工事などのアドバイスを行うことができる資格です。
建築設備士からを置くことは義務化されていませんが、複雑化する建設設備に対して深い知識を持つ建築設備士の存在は重要視されるようになってきています。
合格率は、一次試験で30%程度、二次試験で50%程度となっています。
建築設備士について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。
資格取得を考えている方はぜひご覧ください。

CFT造施工管理技術者
CFT造建物の施工計画作成・施工管理ができるようになる資格です。
CFTとは、円形または角型の鋼管にコンクリートを流し込んで柱にする構造で、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造に続く第四の構造と言われているようです。
合格率は60%程度で難易度は低めです。

ここで紹介した以外にも取っておくと役立つ資格はいくつかあるので、ぜひ確認してください。
まとめ
今回はゼネコンについて詳しく解説しました。
ゼネコンに就職できれば給料も高いですし、様々な経験ができるのでおすすめです。
しかし、ゼネコンへの就職を目指している人は多いので、資格を取得したり経験を積んだりしてスキルを磨いておきましょう!
ゼネコンで大規模プロジェクトを支える存在になってください。
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