基礎知識建設業 働き方改革

建設業は有給休暇がある?ない?取得率が少ない理由と義務について

2019年4月から、最低5日間の有給休暇取得が義務付けられました。

 

建設業でもそれは例外なく義務化されていますが、実際のところどうなのでしょうか。

有給休暇だけでなく通常の休日も少ない建設業でも有休の制度が浸透するよう、ここで有給休暇について知っていきましょう。

 

建設業の平均有給休暇取得率は約53%

2021年に厚生労働省によって行われた調査によると、建設業の有給休暇取得率は53.2%で、付与された有休の半分を消化できているそうです。

「思ったよりも高い!」と感じた方も多いと思いますが、事務などの職種も含めての数字なので、職人だけだともっと少ない可能性はあります。

 

また、主要の16産業の中では建設業の順位は11位となっており、10位の運送業・郵便業よりも低い結果となっています。

年々取得率は上がってきていますが、まだまだ改善の余地があることが分かります。

 

建設業の有休取得率が低い理由

なぜ、建設業の有休取得率は低いのでしょうか。

いくつか考えられる理由を見ていきましょう。

 

工期が短い

建設業は、他業種よりも工期を重んじる傾向にあります。

依頼主が短期間で仕上げることを希望することも多く、短い工期で建物を仕上げなければいけないので、休みを増やしてしまうと納期に間に合わなくなってしまうのです。

 

人手不足

建設業では、人手不足が深刻です。

 

通常で人が足りないため、有休を取る人が増えてしまうと仕事の進行が滞ってしまい支障をきたしてしまいます。

人手が足りないことで有休をとることをみんなが遠慮してしまい、有給取得が浸透していかないのです。

 

若手はまずスキルを身に付ける必要がある

若手はまず技術を身に付ける必要があります。

技術を身に付けるためには、実際にベテランの仕事を見て覚えるか、自分でやってみて身に付けるしかありません。

そのため、若手は特に休みをとっている暇がないのです。

 

しかし、若手は休みが取れないと不満を抱いて離職してしまいやすいので、有休を取りやすくすることは必須です。

 

昔の風土が根強く残っている

昔は有給休暇の取得は義務化されておらず、今よりもっと過酷な職場環境でした。

 

ベテランの職人はそのような時代で働いてきたため、「休みを取らずに働くことが普通」と考えている人もまだいます。

そのような職場では、有給休暇制度があっても利用する人がおらず、当然若手も取得しにくくなります。

会社の風土が有給休暇の取得を妨げているのです。

 

有給休暇を取得させるメリットを理解していない

会社が有給休暇取得のメリットを理解していないと、形だけで実際には自由にとることができないという状態になってしまいます。

それでは従業員の不満が増える一方です。

 

有給休暇があることのメリットを知れば、「積極的に取得してもらおう!」と考えが変わるはず。

有給休暇制度による企業へのメリットで紹介しているのでご覧ください。

 

そもそも有給休暇とは?

建設業 有給休暇

有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して付与されるもので、休みをとっても給料が支払われる休暇のことです。

正社員だけでなく、パート・アルバイト、派遣社員、有期雇用労働者、日給月給制労働者であっても、要件を満たしていれば有休を取得することができます。

 

有給休暇の付与要件

  • 雇用日から6か月が経過している
  • その期間の全労働日の8割以上出勤している

この2つの要件を満たしていれば、有給休暇を取得することができます。

 

8割以上出勤しているか否かは、以下の計算方法で出勤率を出すことで確認することができます。

出勤日÷全労働日(その期間の指定労働日数)×100=出勤率

 

有休の日数は以下のように変化していきます。

勤続日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
有休付与数 10日 11日 12日 13日 14日 15日 20日

 

有給休暇の失効期限

有給休暇の失効期限は、付与日から2年間です。

2年経つと消滅してしまうので、計画的に消化することが重要です。

 

労働者に最低5日間の有休取得をさせるのは義務なので、会社側からも消化するよう促してください。

 

有給休暇の義務化について

2019年4月からの労働基準法の改正により、10日以上の有給休暇が付与された労働者には、最低5日の有休取得をさせなければいけないということが義務付けられました。

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日間、取得時期を指定して有給休暇を取得させなければいけません。

 

取得時期に関しては、労働者の意見を聞き、なるべく希望に合わせる必要があります。

尚、使用者は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければいけないのでご注意ください。

 

また、休暇に関する事項は就業規則に記述することが必須であり、労働者に有給休暇の時期指定を実施する場合は、時期指定の対象労働者の範囲および時期指定の方法について就業規則に記載しなければいけません。

 

罰則について

違反時は罰則が設けられています。

 

年5日の有給休暇を取得させなかった場合 30万円以上の罰金
使用者における時期指定を行う場合に、就業規則に記載していない場合
労働者の希望時期に所定の有給休暇を与えなかった場合 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

 

有給休暇制度による企業へのメリット

生産性の向上

有休を自由に取れるようになることで、体が辛い時や家族と過ごしたい時などに休みを取れるため、肉体的にも精神的にもストレス解消ができます。

 

英気を養うことにより、集中力ややる気がアップして生産性の向上に繋がるのです。

「有休を好きな時にとれる」という環境が、生産性を上げる一つの材料となるのです。

 

アピールポイントになる

建設業では、有給休暇を実際に取得できている比率がそこまで高くないため、有給休暇を積極的に取得させている企業は魅力的に感じます。

企業のアピールポイントになるため、優秀な人材や若手が興味を持ってくれやすくなります。

 

もちろん、言うだけではなく実際に取得させていることが前提です。

万が一言っているだけだと、逆に企業の評判を落としかねないので注意してください。

 

過労や事故の減少に繋がる

有給休暇を取れることで、通常の休みとは別に給料が発生する休みをとることができます。

休む時間をしっかり取ることができることで、過労やそれに伴う事故を防ぐことにも繋がります。

 

体を十分に休ませていない従業員がたくさんいる現場は事故の発生率が高まることは目に見えていますよね。

従業員の健康を守るためにも、有給休暇の取得は必要なのです。

 

離職率が下がる

先ほども言ったとおり、有給休暇をちゃんと取得させている建設業はまだまだ少ないです。

通常の休みにプラスして有給休暇も取れるとなれば、従業員満足度も上がり離職率が下がることでしょう。

 

今から積極的に取得させようと行動するのも遅くありません。

 

従業員にとってプラスとなることを始めることは、「この会社はいい方向に変わろうとしている」と従業員にアピールすることになります。

 

いい方向に向かっている会社から離れようとする人は恐らくいないため、離職率が下がることでしょう♪

 

職場の雰囲気が良くなる

有給休暇を取れるようになると、従業員みんなに心のゆとりができるため、職場の雰囲気が良くなります。

それは、精神的にも肉体的にも疲れをとれる日が増えるからです。

 

休みが少ないと余裕がなくなり、人にきつく当たってしまうなど雰囲気が悪くなってしまうため、有給休暇は必要なのです。

 

積極的に有休を取得させるための方法と注意点

とはいっても、建設業は多忙なため有給休暇を自由にとれるようにするにはまだまだ時間がかかるでしょう。

「先輩が働いているのに休めない」と遠慮する気持ちもあるでしょうし、なかなか取得率を高めるのは難しいですよね。

 

そこで、有給休暇を取得させるための方法をご紹介します。

 

計画的付与を行う

計画的付与とは、休暇と事業運営の調整を図ることを目的に、労使協定に基づき有給休暇の5日を超える分は計画的に与えることができる制度です。

計画的付与であれば、遠慮して休めないこともなくなり、有給休暇取得率をあげることができます。

計画的付与を行う前に、一度従業員全員に同意を取るようにしてください。

反対意見が多ければ実施せず、自由に取らせるようにしましょう。

 

ただし、労働者が過半数で組織する労働組合またはそれに当たる労働組合がない場合は労働者の過半数を代表者とする者との労使協定が必要になります。

加えて、就業規則への明記も必要です。

 

計画的付与を行う場合でも、5日間は労働者が自由に使える分を残さなければいけません。

自由に使える有給休暇が5日なかったり、労使合意がないのに計画付与を行っている場合は違法となるので注意してください。

 

計画的付与には、3つの方法があります。

一斉付与

企業全体で休みの日を設定し、従業員全員が休むように設定することです。

 

お盆休み・年末年始・ゴールデンウィークなどに休暇を一斉付与することで、有給休暇を消費しつつ、従業員同士が気を遣わずに休むことができます。

また、閑散期などに付与することで、企業としても効率よく有休を与えることができます。

 

交替制付与

一斉に休みを取ることが難しい場合は、グループなどに分けて、交替で有給休暇を付与するのがいいでしょう。

現場の状況を見ながら有給を与えることができるので、企業としても管理しやすいです。

 

個人別付与

個人の誕生日・結婚記念日などに有給休暇を取れるようにする方法です。

記念日は日程が決まっているため、事前に調整をしやすくなります。

 

有休希望日を出してもらい、調整する

これは大くの企業が行っている方法だと思いますが、数週間前に有給希望日を出してもらい、従業員同士の希望をすり合わせながら調整する方法です。

第3希望まで出してもらい、現場の状況と照らし合わせながら調整します。

全員が希望を出すため、有休をとる罪悪感が少なく済みます。

 

有休を取りやすいよう職場の環境を変える

有給休暇の取得率を上げるには、職場の雰囲気を変えるのも重要なことです。

上司や管理者側から有給休暇を取るように随時伝え、「健康経営のために休みを回していく」という考えを浸透させることで、従業員同士が気持ちよく有休を利用できます。

やはり、上に立つ人たちが積極的に使うように伝えていくことが重要です。

 

有給休暇の取得率を上げて、職場を良くしていこう♪

有給休暇は、従業員が健康的に働くために必要な制度です。

義務化されているのも、働き方改革を推進しワークバランスの充実を図るためで、これは過労死や仕事による鬱の減少にも繋がります。

建設業は重労働な仕事が多いため、休みが十分に取れるように制度を積極的に取り入れていきましょう!

 

他にも、建設業の方向けの役立つ情報を多く投稿しているので、ぜひ参考にしていってください♪

 

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