建設業許可には、一般建設業と特定建設業の2つがあります。
この2つの違いは何か、要件や申請方法などを紹介していこうと思います。
一般建設業と特定建設業の違い
一般建設業とは
一般建設業は、建設業の許可の1つです。
建設工事の発注者から直接請け負った元請工事の全部または一部を下請けに出す際の下請け契約金額が4,000万円未満(建設一式工事の場合は6,000万円未満)の場合や、工事を全て自社で施工する場合、または下請けとしてだけ工事を行う場合には、一般建設業許可が必要になります。
【要件】
≪専任技術者要件≫
- ➀許可を受けようとする業種について、高校(旧実業高校を含む)指定学科卒業後5年以上、大学(高等専門学校・旧専門学校を含む)指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者
- ➁許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験者を有する者
- ➂許可を受けようとする業種関して定めた国家資格等を有する者。その他国土交通省が個別の申請に基づき認めた者
≪財産的要件≫
- ➀自己資産が500万円以上あること
- ➁500万円以上の資金調達能力があること
【有効期限】
有効期限は5年です。
そのため、5年ごとに更新する必要があります。
有効期限が満了するまでの90日前~30日前までに登録更新の申請をしなければいけないので注意しましょう。
特定建設業とは
特別建設業は、建設業許可の1つです。
元請業者として、建設工事の発注者から直接請け負った元請工事の全部または一部を下請業者に出す下請契約金額が4,000万円以上(建設一式工事の場合は6,000万円以上)になる工事を請け負う場合は、特定建設業許可が必要になります。
【要件】
≪専任技術者要件≫
- ➀許可を受けようとする業種に関して定めた国家資格等を有する者
- ➁一般建設業の➀~➂のいずれかに該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上指導監督的な実務経験を有する者
- ➂国土交通省が➀または➁に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者
- ➃指定建設業(土木・建築・電気・管工事等の7業種)については、➀または➂に該当する者であること
≪財産的要件≫
以下のすべてを満たす必要があります。
許可更新時に1つでも満たないものがあると、更新できないのでご注意ください。
➀欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
欠損の額とは、
- 法人の場合
- 貸借対照表の繰越利益余剰金がマイナスである場合に、その額が資本余剰金・利益準備金および任意積立金の合計額を上回る分の額
- 個人の場合
- 事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金および準備金を加えた額を上回る分の額
欠損比率の計算方法
法人 | {繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金)}/資本金≦20% |
個人 | (事業主損失+事業主仮勘定-事業主貸勘定)/期首資本金≦20% |
➁流動比率が75%以上であること
流動比率とは、流動負債(1年以内に返済するべき負債)の合計額のうち、流動資産(1年以内に現金化できる資産)が占める割合のことです。
流動比率は基本的に高ければ高いほど良く、会社の安全性を図る指標です。
支払い能力があることを示すものでもあります。
➂資本金が2,000万円以上あること
資本期は会社の形態により指すものが異なります。
株式会社の場合は払込資本金、個人事業主の場合は期首資本金
➃自己資本が4,000万円以上あること
自己資本とは、資本金や営業などにより得られた利益のことを指します。
【有効期限】
有効期限は5年です。そのため、5年ごとに更新する必要があります。
有効期限が満了するまでの90日前~30日前までに登録更新の申請をしなければいけないので注意しましょう。

「発注者から直接請け負う元請業者か否か」「下請け契約金額が4,000万円以上か否か」という点です。
元請でなければ、一次下請け、二次下請けであっても一般建設業許可があれば大丈夫なのです。
建設業許可業者の義務について
建設業許可を取得した業者には、いくつかの義務が課せられます。
一般建設業と特定建設業の義務を紹介したいと思います。
➀許可行政庁への届出義務
責任者が変わったなど申請内容に変更があった場合、変更内容を許可行政庁へ届け出る義務があります。
➁標識の掲示
店舗及び工事現場ごとに、見やすい位置に標識を掲げる義務があります。
➂帳簿の備え付け・保存
請負契約の内容を記した帳簿を、営業所ごとに用意しておく必要があります。
帳簿は5年間、新築の建設工事についての帳簿は10年間の保存義務があります。
➃営業に関する図書の保存
発注者から直接建設工事を請け負った元請業者は、打ち合わせや完成図・施工体系図など営業に関する図書を、営業所ごとに建設工事の目的物の引き渡しを受けた時から10年間保存しなければいけない義務があります。
➄契約締結に関する義務
着工前書面契約の徹底、契約書面への記載必須事項への規定等の義務があります。
また、自己の取引上の地位を不当に利用して工事原価に満たない価格での工事契約を強制する行為や、契約後に取引上の地位を利用して当該工事に使用する資材等の購入先を指定し請負人の利益を害する行為は禁止されています。
➅工事現場における施工体制に関する義務
主任技術者の設置義務
元請・下請問わず、工事現場に主任技術者または管理技術者を配置する義務があります。
JV工事(共同事業体のことで、一企業では請け負うことができない大規模工事を複数の事業が協力して請け負う事業組織体。)では、全ての構成員がこのような技術者を現場に配置することになります。
工事現場への主任技術者等の専任配置義務
個人住宅を除くほとんどの工事では、請負代金の額が3500万円(建築一式工事の場合は7000万円)以上のものについては工事の安全と適切な施工のために元請・下請問わず工事現場ごとに技術者を専任で置かなければいけません。
しかし、令和2年10月の法改正により、管理技術者に関しては要件を満たせば兼務が認められるようになりました。
また、特定専門工事※に限定して要件を全て満たせば主任技術者の配置をしなくてもよくなる「専門工事一括管理施工制度」というものが誕生しました。
≪特定専門工事とは≫
土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事のうち、この施工技術が画一的であり、かつその施工の技術上の管理の効率化を図る必要があると政令で定めるもので、建設工事の元請が締結した下請契約の請負金額が3,500万円未満となるものをいいます。
(鉄筋工事・型枠工事など)
≪専門工事一括管理施工制度の適用条件≫
- ・元請/下請間で書面による合意を行う
- ・合意前にあらかじめ元請人が注文者の書面による承諾を得る
- ・元請人の主任技術者が、当該特定専門工事と同じ種類の建設工事に関し1年以上の指導監督
- 的実務経験がある
- ・元請人の主任技術者は工事現場に専任で置かれていること
- ・主任技術者を置かないことにした下請がさらなる下請け契約をしないこと
一括下請負の禁止
請け負った工事に対して他社に一括して下請負する行為、他社から一括して下請負される行為を禁止します。
特定建設業許可業者に関する義務
≪施工体制台帳・施工体系図の作成義務≫
発注者から工事を直接請け負った特定建設業許可業者が、4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上を下請負して工事をする場合において、当該工事に関係するすべての下請業者を明らかにする施工体制台帳等を作成する必要があります。
≪下請負人への指導義務≫
発注者から直接工事を請け負った特定建設業許可業者は、当該工事に関係する全ての下請業者に対する法令尊守始動の実施、法令違反を行う下請負人がいた場合の行政庁への通報義務が課せられています。
➆下請代金の支払いに関する義務
下請代金の支払い期限
注文者から請負代金の出来高払(工事の仕上がり状況に応じて代金を支払うこと)または竣工払(工事の完了確認の検査に合格した際に支払われる最終の請負代金)を受けた際は、
その支払いの対象となった工事を施工した下請人に対して相当する下請代金を1か月以内に支払わなければいけません。
特定建設業許可業者に関する義務
下請代金支払い期日の特例
特定建設業許可業者は、「一か月以内」または「下請負人(特定建設業許可業者又は資本金額が4,000万円以上の法人を除く)からの引き渡し申出日から数えて50日以内」のいずれか早い期日内に下請代金の支払いを行う必要があります。
割引困難な手形による支払の禁止
特定建設業許可業者が、一般の金融機関による割引を受けられない手形で下請代金の支払いを行うことは禁止されています。
※手形の振出日から支払期日までの期間が120日を超える手形は、割引困難な手形とみなされます。
これらの義務の中で特定建設業許可業者のみに課されるものは、
- 施工体制台帳・施工体系図の作成義務
- 下請負人への指導義務
- 下請代金支払い期日の特例
- 割引困難な手形による支払の禁止
- 管理技術者の設置義務
これらになります。特定建設業許可をとる場合はよく確認しておいてくださいね!
建設業許可取得にかかる期間・費用は?
建設業許可を取りたい場合、取得までにそれくらいの期間がかかるのか、お金はかかるのかといった部分は一番知っておきたいですよね。
取得にかかる期間
- 都道府県知事許可:約45日
- 国土交通大臣許可:約120日
この数字は申請後から許可証が手元に届くまでの期間です。
建設業許可申請書は記入書類が多く、役所とのやりとりも発生するなど申請するまでにかなりの時間がかかります。
準備をすばやく行い早く許可を取得するためには、専門家にアドバイスをもらうのが一番です。
行政書士事務所に相談し、素早く正確な書類を提出できるようにしましょう。
許可取得にかかる費用
建設業許可取得にかかる費用の種類は、
手数料や登録免許税+提出書類などの諸経費 です。
≪手数料≫
- 都道府県知事許可:9万円(非課税)
- 国土交通大臣許可:15万円(非課税)
- ※一般許可と特定許可どちらもとる場合は、それぞれ倍の代金がかかります。
≪諸経費≫
- 登記事項証明書:600円
- 残高証明書:800円
- 住民税:300円
- 印鑑証明書:300円
- 身分証明書:300円
- 納税証明書:400円
- 住民票:300円 等
建設業許可申請を行政書士事務所に依頼する場合
建設業許可申請を行政書士に代行してもらうこともできます。
その場合は、上記の費用に加えて代行費用がかかります。
かかる費用はピンキリで、8万円というところもあれば13万円というところもあります。
都心の方が価格競争により代行費用が安い傾向にあります。
法人で知事許可の場合の平均金額は、約13万円です。
法人で大臣許可の場合の平均金額は、約18万円です。
一般許可よりも特定許可の方が金額が高く、更新よりも新規申請の方が手間がかかる分金額が高くなります。
申請期限が迫っている場合や申請書類を書く時間がない場合は使うのも手です。
建設業許可取得時の注意点
建設業許可を取る際の注意点です。
後悔しないように必ず確認していってくださいね。
本当に許可が必要か考える
建設業許可は、請負金額が専門工事で500万円未満の工事・建築一式工事で1,500万円未満または延べ面積が150㎡に満たない木造建築工事であれば取る必要はありません。
上記のような一般住宅などの小規模な工事しか行わない場合は、無理に建設業許可を取らなくてもいいのです。
尚、建設業許可を取得すると施工できる工事の範囲が広がったり対外的に会社の信用が増すといったメリットがあります。
「もっと会社の信用度を上げたい」
「扱える工事の範囲を広げたい」
という場合は建設業許可を取得することをおすすめします。
建設業許可取得後は更新が必要
「特定建設業とは」の有効期限の欄にも書きましたが、建設業許可取得後は5年ごとの更新が必要になります。
有効期限が満了するまでの90日前~30日前までに登録更新の申請をする必要があるので、忘れないようにしてください!
建設業許可の義務は違反してはいけない
建設業許可業者には、たくさんの義務が課せられます。
それらの義務を違反した場合、行政処分(業務改善命令・営業停止・許可の取り消し)の対象になったり、司法当局の手により逮捕・刑罰の適用等の処罰が下る可能性があります。
建設業許可業者の義務を事前に確認する
建設業許可業者にはたくさんの義務が課せられ、違反することは許されません。
そのため、許可を取る前にどんな義務があるのかを確認しておきましょう。
いつまで取得するかの計画を立てる
建設業許可を取得するには、準備を含めると数か月かかります。
そのため、早く準備を始めないと許可を得るのにかなりの期間がかかってしまいます。
いつまでに取りたいかの期間をしっかり決め、逆算して準備を始める日を明確に決めましょう。
準備を始める日を決めることでスムーズに申請作業を行うことができるでしょう。
まとめ
建設業許可を取るのも取った後も手間がかかりますが、その分メリットは大きいです。
企業を大きくしていきたい場合はとった方がいいでしょう。
今回の内容をまとめると、
- 建設業許可には一般建設業と特定建設業がある
- 許可取得には要件があり、取得後はいくつかの義務が課せられる
- 許可取得にかかる期間はトータル数か月かかる
- 費用は登録費用+諸経費
このようになります。
まずは注意点を確認して、建設業許可が必要かどうかを検討してみてください♪
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