人手不足解消基礎知識

建設業で働ける外国人の在留資格とは?

建設業界での人手不足により、外国人労働者の雇用を検討している企業も多いのではないでしょうか。

前回の外国人雇用のメリット・デメリットや事例に引き続き、知っておくべき「在留資格」についてご紹介していこうと思います。

 

建設業の人手不足が深刻化

建設業界は東京オリンピック・パラリンピックの特需もあり、業界の景気は高い水準にあります。

倒産件数も減ってきており、今後もリニア新幹線や大阪の万博など、建設需要は増加していくことが予想できます。

しかし、建設需要に対する人手不足が深刻な問題になっています。

 

下のグラフは、「2019年産業別雇用人員の過不足グラフ」です。

2019年産業別雇用人員の過不足グラフ

グラフ出典元:TCG

全体的に人手が不足していますが、その中でも建設業の不足量が一番多いです。

このまま行くと、どんどん下がっていってしまう恐れがあります。

 

建設需要がありながら人手不足という現状により、建設業の賃金は上がり続けているようです。

賃金が上がっても人手不足があまり解消されない状態はかなり深刻です。

 

日本人労働者は引く手数多でなかなか採用に至らないため、海外人材の導入を進める企業も増えていっています。

 

建設業で働ける在留資格は6つ

在留資格とは、外国人がなんらかの理由で日本に滞在するために必要な資格のことです。

外国人が持っている在留資格によって、その業界で雇用できるかどうか判断されます。

ここでは、建設業界で働くことができる在留資格を紹介していきます。

 

特定技能

人手不足が深刻な14業種において、人手不足を解消するために2019年4月に整備された在留資格です。

単純労働を含むため以前は外国人労働者の雇用が難しかったようですが、国内での人材確保が厳しい現状を踏まえ、即戦力になる外国人の就労が可能になりました。

 

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つがあります。

 

特定技能1号

特定産業分野に対する相当程度の知識または経験が必要な技能を用いて業務を行う外国人向けの在留資格です。

必要な技能レベルは、特に育成や訓練をしなくてもすぐに一定の業務に取り組むことができる程度です。

 

1号の在留期間は通算で5年までとなります。

 

特定技能2号

特定産業分野に対する熟練した技能を用いて業務を行う外国人向けの在留資格です。

特定技能1号を修了した後にとることができるものになります。

建設業と造船・舶用工業の2業種が2021年から試験開始予定となっています。

 

1号と違い在留期間の指定はなく、在留期間の更新ができて条件を満たせば永住も可能です。

 

外国人建設就労者

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要の増加に伴い、即戦力として働ける外国人材を期間限定で雇用するために設けられた在留資格。

 

新規の受付は2021年3月に終了していますが、2020年度末までに就労を開始した外国人材については、2023年3月末までの就労が可能となっています。

 

技能実習

「外国人技能実習制度」のことをいいます。

発展途上国の人材が日本で就労を行うことで、母国では習得困難な技術を身に付けてもらい、帰国後にその技術を用いて母国の経済発展に役立ててもらうための制度です。

国内企業の人手不足を補うための人材ではないので注意しましょう。

 

雇用期間は最長5年です。

受け入れ方式は「企業単独型」と「団体監理型」の2つがあります。

 

  • 企業単独型:日本の企業が海外の現地法人・派遣企業から職員を受け入れる方式
  • 団体監理型:協同組合や商工会等の営利を目的としない団体が技能実習生を受け入れ、
  •       監理団体傘下の企業等で技能実習を行う方式

 

技術・人文・国際業務

自然科学や法学・社会学などの分野に属する知識または技術を必要とする業務、または外国文化の思考・感受性を必要とする業務を行う外国人を受け入れるために整備された在留資格です。

在留可能期間は3か月・1年・3年・5年のいずれかです。

 

更新回数に制限がなく、日本での就業期間が長くなると在留期間の長いビザが許可されるようになります。

 

技術・人文・国際業務の在留資格を取得するには、大学または専門学校を卒業するか、10以上の実務経験が必要になります。

 

【従事できる職種】

  • 技術分野:システムエンジニア・プログラマー・技術開発・データベース構築など専門技術
  •      が必要となるもの
  • 人文分野:人事・総務・企画・営業・マーケテイング支援など
  • 国際:通訳・翻訳・語学の先生など

 

技能

特定の産業分野において熟練した技能を必要とする業務を行う外国人に与えられる在留資格です。

技能ビザを取得するには、3~10年以上の実務経験が必要になります。

必要な実務経験数は職種によって異なるので確認してみてください。

 

【具体的な職種】

調理師・建築技術者・パイロット・動物調教師・ソムリエ・スポーツ指導者など

 

身分の在留資格

身分に基づく在留資格というものもあり、永住者・定住者・日本人配偶者等・永住者の配偶者等、日本に滞在する目的が結婚や長期滞在にある外国人籍の方に与えられます。

身分の在留資格の場合、日本での活動に制限がなく、建設業でも働くことができます。

 

 

中長期的雇用には「特定技能ビザ」保持者がおすすめ!

特定技能ビザを持っている外国人は、雇用メリットが多いです。

メリットを以下にまとめました。

  • 人手不足の解消が目的
  • 即戦力になる
  • 優秀な人材が多い
  • 技能実習から継続して働いてもらえる
  • フルタイムで雇用できる
  • 日本語でのコミュニケーションが取りやすい

 

このように、「人手不足解消のためにある程度の技術を持った人材が欲しい」という場合は特定技能ビザをもった外国人材を雇用するのがおすすめです。

 

即戦力として働ける程の知識・技術を持っているため、教育コストも少なくて済みます。

特定技能2号に移行できれば期限なく働いてもらえるので、長期的に雇うことが可能になります。

 

特定技能ビザを持っている外国人であれば、長い目で見て優秀な戦力として育てることができるでしょう。

優秀な人材に短期間でやめられないために、企業側も待遇や環境を整える必要があります。

 

留学生・家族滞在の場合は「資格外活動許可」が必要

留学や家族滞在など日本滞在の目的が就労ではない場合で、在留資格で認められている以外の活動(バイトなど)を行いたい場合には資格外活動許可が必要になります。

難民認定法において、「活動の遂行を阻害しない範囲内」で相当と認められた場合は、在留資格で認められた以外の活動を行うことができるのです。

 

ただし、就労時間は1週間で28時間以内と決まっています。

もしこの時間を超えてしまうと、雇用者側には300万円以下の罰金、労働者はビザの更新就労ビザへの変更時に不利に働いたり、最悪の場合日本から強制退去になってしまいます。

外国人を守るためにも、就労時間は必ず守りましょう。

 

尚、夏休みや冬休みなどの長期休暇期間は1日8時間までの労働が認められています。

長期休暇時の就労時間もしっかり守るようにしましょう!

 

加えて、資格外活動許可のない留学生や家族滞在者を雇用してしまうと、「不法就労助長罪」に問われ、最長3年の懲役・300万円以下の罰金が課される可能性があります。

資格外活動許可の有無は在留カードの裏面に記入してあるので、雇用前にしっかり確認してください!

 

在留資格の申請方法

在留資格を取得する方法は2つあります。

  • 入国前に「在留資格認定証明書」を申請してもらう方法
  • 在留資格を変更する方法

 

それぞれの特徴と申請方法をご紹介していきます。

 

入国前に「在留資格認定証明書」を申請してもらう方法

在留資格は入国後に自身で申請することもできますが、手間がかかる上に言葉の壁もあるため、かなりの時間がかかってしまいます。

そのため、外国人が入国する前に雇い先企業に代わりに「在留資格認定証明書」を申請し、送ってもらうパターンが多いようです。

 

【在留資格認定証明書申請の流れ】

外国人と日本企業が雇用契約を結ぶ

日本企業が必要書類をまとめて地方入国管理局に「在留資格認定証明書」を申請する

「在留資格認定証明書」が交付されたら雇用予定外国人に送付する

現地の日本大使館等で「在留資格認定証明書」を提示しビザを発行する

日本入国の際、ビザと在留資格認定証明書を提示する

 

【必要書類】

  • ・在留資格認定証明書交付申請書 1部
  • ・写真 2枚
  • ・返信用封筒 1通

 

 

オペレーターふきだし

その他、日本での活動内容に応じて必要となる書類が異なります。

「申請に関する必要書類」「所属機関に関する必要書類」「分野に関する必要書類」もそれぞれあるので、確認してみてください。

 

在留資格認定証明書の活動に応じた提出必要書類一覧

 

在留資格を変更する方法

日本に長期滞在している外国人が就職・転職をする場合、在留資格の変更が必要になります。

 

【変更の流れ】

外国人本人または代理人が必要書類をまとめて地方入国管理局へ在留資格変更許可を申請する

入国管理局から許可通知が届く

外国人本人が許可通知と必要な書類を持って入国管理局へ行く。

新しい在留カードが交付される

 

【変更・更新に必要書類】

  • ・在留資格変更許可申請書
  • ・パスポート
  • ・申請理由書
  • ・写真(16歳未満は不要)
  • 日本の活動内容に応じた資料
  • ・在留カード
  • ・外国人登録証明書

 

【許可通知後に入国管理局で必要となる書類】

  • ・許可通知はがき
  • ・パスポート
  • ・手数料納付書
  • ・外国人登録証明書
  • ・写真

 

通らなかった場合の対処法

在留資格申請が通らず不許可になる場合も少なからずあります。

  • 不許可になる理由として挙げられるのは、書類に不備や不足がある
  • 在留時の違法行為
  • 申請書類に偽造の疑いがある
  • 取得技能と業務内容の不一致

このような場合です。

 

不許可になったらどうすればいいの?

不許可になってしまった場合、どのような行動を行えばいいのか知っておきましょう。

 

1.不許可の理由を確認する

なぜ不許可なのか自分で探し出そうとしても手間がかかるだけです。

まずは理由を明確にするために、地方入国管理局に出向いて理由を教えてもらいましょう。

 

【理由を聞く際に持参するもの】

〇東京入国管理局の場合

  • ・不許可の通知書
  • ・身分証
  •  外国人本人の場合:外国人登録証明書/パスポート
  •  代理人の場合:社員証/申請代理人の資格を証明するもの
  • ・申請書類一式のコピー

 

2.再申請する

不許可理由を聞いた後、不許可の原因が解消できるものであれば再度申請することができます。

尚、出国準備状態であっても再申請することが可能です。

 

しかし、出国準備状態での再申請は時間がないため早急な対応が必要です。

万が一再申請が通らなかった場合退去手続きが強制となるため、再申請は心しておこなってください。

 

まとめ

外国人の雇用が増加していますが、国籍が違う分行わなければいけない手続きが多いです。

どんな在留資格を持っている外国人が欲しいのか、取得している在留資格と業務内容は一致しているかなど雇用前にしっかり確認しておきましょう。

 

外国人を雇うことで人手不足が補えるだけでなく、日本人より真面目で熱心に働いてくれる人材を得られる可能性も十分にあります。

外国人が安心して働けるように、期間に余裕を持って不備のない申請を行いましょう♪

 

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