女性が社会に進出するようになってから何十年も経ち、多くの職種で女性が活躍するようになってきています。
しかし、建設業での女性就業率はどうでしょうか。
グラフを見てみましょう。
こちらは、2020年における産業別の女性就業者の割合を示したものです。
画像出典元:労働政策研究・研修機構
グラフを見て分かるように、建設業の女性就業者は全体の2.8%しかいません。
下から数えた方が早いのは誰の目にも明らかです。
なぜ建設業の女性割合は少ないのか、改善するにはどうすればいいのかを解説していこうと思います。
建設業に女性が少ない理由
まず、女性が少ない理由を知っていきましょう。
男の仕事というイメージがある
建設業は「力仕事」というイメージがあるため、女性には向いていないと思われがちです。
現場仕事は力がいるものが多いですが、その他にもシステムや管理・設計やデザインなど女性でもできる、女性の感性を生かせる仕事があることは知られていません。
女性にはキツイ職業という固定概念があるため、女性の場合は親に反対される場合もあるのです。
女性専用の設備・道具が整っていない
女性の場合、男性のようにその場で着替えることはできませんし、トイレも共有を使いたがりません。
更衣室・トイレ・休憩所など、女性が安心して働ける設備が整っている建設会社が少ないため、女性人気が少ないのです。
また、女性用のヘルメットや作業服も種類が少なく、それが働きにくさに繋がって就業者数を下げているのです。
育休・産休制度が整っていない
女性の場合は特に、子供ができる可能性を考えて育休・産休の制度が整っている職場で働きたいと思うでしょう。
建設業は男性の従業員が大半なので、そのような制度が整っていることが少ないです。
また、妊娠中や産後の大変さを共感してもらいにくく、それが働きにくさに繋がってしまいます。
女性社員が少なく悩みを共有できない
増えてきているとはいえ、建設業の女性割合は少ないため、女性特有の悩みを共有できる相手がいなくて不安やストレスに繋がりやすいです。
建設業で働く女性同士の交流の場を設けないと、女性従業員の数は一向に増えていかないでしょう。
女性を雇用するメリットは?
「そもそも、建設業に女性を迎えるメリットはなんなの?」と疑問に思う方もいると思います。
そこを分かった上で雇用しないと、女性従業員の良さを引き出すことができません。
ここで理解していきましょう。
貴重な戦力になる
女性で力持ちの人は少ないかもしれませんが、管理やデザインは女性の感性やきめ細かさを発揮しながら取り組める仕事です。
加えて、資格を取っていれば現場でも働いてもらうことができるため、人手不足解消につながるのです。
女性の視点で意見を貰える
女性と男性の考え方や価値観は違います。
女性従業員がいることで、今までは気づかなかったけど改善した方がいい点を発見することができるでしょう。
また、女性ならではの視点でデザインを提案して、職場に新しい風を吹かせることもできます。
さらに、男性では気が付かないお客様に対する気遣いにより、顧客満足度の向上も期待できます。
働く環境が良くなる
女性が入社することで、今までの職場環境をガラリと変える必要性が出てきます。
トイレを男女別にしたり更衣室を作ったり、女性が働きやすい環境にすることは、職場全体の環境を変えることに繋がります。
女性がいることで職場の雰囲気が良くなったり、人への気遣いをする人が増えたりするでしょう。
また、職場環境を変えることは、会社の働き方改革を進めるきっかけになるのです!
コミュニケーションが活発になる
女性は延々とおしゃべりができることから分かるように、男性よりコミュニケーション能力が高い人が多いです。
そのため、職場に1人女性がいるだけでクライアントとのやりとりがスムーズにいき、新規顧客獲得やお得意様の獲得に繋がりやすくなります。
文このように、女性を職場に迎えることは沢山のメリットがあります♪職場の雰囲気や環境を変える最初の一歩として、女性の採用を検討してみてください。
でもちょっと待ってください。
採用する前に、女性が快適に働ける環境が整っているか確認してください。
何も変えていない状態で女性を迎えても、すぐに辞められてしまいますよ!
ここからは、女性従業員を増やすための取り組みは何があるか知っていきましょう。
すぐに試そう!女性を増やすための取り組みについて
設備を整える
やはりまずは、女性が働きやすい設備や道具を揃えることから始めましょう。
上記で話した男女別トイレ・更衣室・休憩所の確保を行い、女性用の工具入れやハーネスの導入も検討してください。
少しでも整備を整え女性を受け入れる体制ができれば、興味をもってくれる可能性がグッと上がります。
イメージアップのPRが大事
女性に入ってもらうためのPRをしないと意味がありません。
HPや求人募集ページで「女性が働きやすい設備が整っています!」や、すでに女性従業員がいるようなら「女性活躍中!丁寧にサポートします」などのPR文・写真などで興味を引く工夫をしましょう。
たくさん宣伝して人の目に入る回数を増やした方がいいので、SNSで定期的に募集を流したり、動画作ったり、複数の求人サイトに載せたりして、女性登用の促進を行っていることを伝えましょう。
制度を整える
制度を整えることも重要です。
女性にとって希望条件の1つとなる育児に関しての制度を整えておきましょう。
産休・育休制度はもちろん、産後の時短勤務も可能にすることで、女性だけではなく男性の育児を促すことにも繋がり、従業員全体の満足度がアップしますよ!
託児所を設ける
コストがかかりますが、会社内や近くに託児所設けることで、子育て社員の負担も減り、仕事に従事できる時間も長くなります。
これは子育てを行うお母さんお父さんにはかなりのメリットなので、そこを押し出してアピールができれば多くの募集が得られるでしょう。
意見が言いやすい雰囲気を作る
男性が何も言われずに女性の意見や不便な点を理解する子は至難の業です。
男性と女性は体の構造も違えば考え方も違うので当然です。
分からない相手のことを知って改善するために、意見が言いやすい雰囲気を作りましょう。
直接伝えられる関係性を築けたら一番いいですが、難しい場合もあるでしょう。
その場合は匿名の意見箱を作って、気になることがあれば入れてもらい、上司や管理者は週1程度で中身を確認します。
そして、そこに入っていた意見を前向きに検討し、どうしても難しい場合は従業員全員の前で難しい理由を話して代替案を出すか、みんなで話合う時間を設けるなどの工夫をしてください。
または、定期的にアンケートを配り、そこに悩みや改善してほしいことを書いてもらうという方法もあります。アンケートはすき間時間にできるようにweb上のものにするのもいいと思います。
このように、現場の生の声を聞いて実際に反映させることで、女性だけでなく男性にとっても働きやすい環境を整えることができるのです!
女性同士が交流できる場への参加を促す
建設業に努める女性交流会が定期的に各地で行われています。
職場に女性が少ない場合、このような交流会に参加するよう促すことで、建設業で働く女性と話す機会を得ることができ、さらに共通の悩みを話すことができてストレス解消にもなるため、仕事のモチベーションにも繋がるでしょう。
または会社内で女性がいる他企業との交流会を企画し、交流できる場所を提供するという方法もあります。
助成金の利用
女性従業員を雇うことでもらうことができる助成金もあります。
「女性を増やしたいけど、資金があまりないため設備を整えられない…」という会社も安心して女性を迎える準備を行うことが出来ます。
助成金には種類があるため、女性の活躍促進を支援する助成金制度を選びましょう。
助成金を受けるためには条件が設けられているため、まずは自分の会社がその条件に当てはまるかどうかを確認してから応募してみてください。
女性が活躍している企業の例
女性が活躍している企業の例を見ることで、モチベーションも上がりますし、参考にもなりますよね。
女性が活躍している企業の例を挙げるので、ぜひ見ていってください。
清水ハウス株式会社
大阪にあり、16000人以上の社員を抱える建設会社で、その2割は女性従業員で構成されています。
企業理念として「人間愛」を掲げており、以前から女性活躍の促進や多様な人材の活用などに取り組んできたそうです。
そして、「両立支援関連施策の拡充」により育児と仕事の両立をする社員が増えてきているため、それを叶えるための支援制度の導入に取り組んでいるようです。
【取り組み内容】
- ・育児・介護中の従業員や通勤困難者に対する在宅勤務制度
- ・グループウェアの導入
- ・早期復職を支援する保活コンシェルジュ制度
- ・フルタイム申請の従業員が利用できるベビーシッター費用補助
【取り組み結果】
- ・在宅勤務の導入により、時間に制約のある従業員でも通常と同じだけ働くことができ、生産性を高めることができた
- ・育休中の従業員も在宅勤務が使えるため、スキルが衰えることなくスムーズに復職できている
- ・仕事と育児を両立しながら働く管理職の女性も増えてきている
- ・生産性向上の効果で、利益も順調に増えてきている
西田建設株式会社
企画から施工、メンテナンスまでのトータルケアを行っている福井県の建設業。
建設業は男性の職場というイメージが強いため、そのイメージを払拭して女性や若者が活躍できる場にしたいという思いから、女性活躍促進の取り組みを始めたそうです。
【取り組み内容】
- ・各部署の主要メンバーが集まってする会議では、参加者の約半数が女性になるよう調整
- ・採用関連の広報イベントや地方新聞・テレビ番組には、女性社員が出て発信を行う
- ・社員面談やメール等で育休・産休制度の活用を促す
- ・就職説明会やインターンシップにおいて、女性3人の「環境推進広報チーム」が実務経験を
- 交えた話をすることで、女性や若者へアプローチしている
【取り組み結果】
- ・技術職希望の女性が入職し、現場のコミュニケーションが高まった
- ・産休・育休予定の社員の情報を会議で共有することで、各部署が連携を取りながら産休・
- 育休予定の社員の業務をフォローできるような環境が整った
唐津土建工業株式会社
佐賀にある総合建設業。
建設業の「人手不足」という課題を解決するために、国が女性技術者の増加に取り組んでいます。
そんな中で、自分の会社も女性が活躍できる組織作りに取り組まなければいけないという考えに至り、取り組みを始めたそうです。
【取り組み内容】
- ・ダイバーシティ専任者を設け、公的機関が主催する研修会に積極的に参加し、情報収集を
- する
- ・技術職への女性の応募が増えるよう、学生向け広報誌へのPRや高校・大学に対して自社は
- 女性を支援する会社であることをアピールし、イメージアップの採用活動を行った
- ・女性社員を対象とした現場見学会の実施
【取り組み結果】
- ・技術職で女性を1名採用できた
- ・今後も女性が活躍できる取り組みを進め、「えるぼし※」認定の取得を目指そうという
- 機運が生まれた
- ※「えるぼし」とは、女性活躍促進に関する取り組み状況が優良な事業主が申請できる、厚生労働省が定める認定マークのこと。
- 企業のイメージアップに繋がったり、公共調達において加点評価を受けることができます。

上の事例以外にも、建設業で女性の活躍を支援する取り組みを行っている建設会社はたくさんあります。
まずは情報収集からで構いません。
会社の雰囲気や環境を変えるためにも、ぜひ事例を参考に取り組みを始めてみてください!
まとめ
今回は、建設業での女性の活躍についてお話ししました。
女性を採用することで得られるメリットを考えたら、女性従業員を得るために今すぐ環境改善に取り組まなければ損です!
女性の柔軟な発想力と気遣い・とコミュニケーション能力をフル活用できる職場を作れば、社内での働き方改革も進み、会社のイメージアップにも繋がりますよ♪
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